n=k,k+1 の仮定

帰納法の仮定が\(n=k,k+1\)の2つ必要な場合について見ていきます。

 

(例題1)
実数\(x,y\)について、\(x+y\), \(xy\) がともに偶数とする。このとき、
(1)自然数\(n\)に対して \(x^n+y^n\) は偶数になることを示せ。
(2)整数以外の実数の組 \((x,y)\) の例を示せ。

 

(解答)
(1)

対称式になっているので、\(x^n+y^n\)を\(x+y,xy\)で表すことを考えます。
単純に\(x+y,xy\)のみで表すのは大変なので、1個次数を下げた式で表すことにして帰納法で示していきますが、\(x^n+y^n\) を \(x^{n-1}+y^{n-1}\) を使って表すと
\(x^n+y^n=(x^{n-1}+y^{n-1})(x+y)-x^{n-1}y-xy^{n-1}\)
\(=(x^{n-1}+y^{n-1})(x+y)-xy(x^{n-2}+y^{n-2})\)
となり、\(x^{n-2}+y^{n-2}\) の情報も必要になってきます。したがって、帰納法の仮定が2つ必要です。解答ではこの等式で\(n=k+2\)として、\(n=k,k+1\)の仮定で\(x^{k+2}+y^{k+2}\)について考えていきますが、そのまま\(n=k\)として\(n=k-2,k-1\)仮定でもOKです(そのときは\(k=3,4,5,\cdots\)として下さい)。

「\(x^n+y^n\) は偶数」・・・①
を数学的帰納法で示す。

\(x+y,xy\) はどちらも偶数であるから

[1]\(n=1,2\) のとき
\(x^1+y^1=x+y\)
\(x^2+y^2=(x+y)^2-2xy\)
より、\(x^1+y^1\), \(x^2+y^2\) は偶数となるから\(n=1,2\)のとき①は成立。

[2]\(n=k,k+1\) のとき (\(k=1,2,3,\cdots\))
①が成立すると仮定すると
\(x^{k}+y^{k}\), \(x^{k+1}+y^{k+1}\) は偶数。

このとき
\(x^{k+2}+y^{k+2}=(x^{k+1}+y^{k+1})(x+y)-xy(x^{k}+y^{k})\)

であるから、\(x^{k+2}+y^{k+2}\) も偶数になる。
よって\(n=k+2\)のときも①が成立する。

[1][2]よりすべての自然数\(n\)に対して \(x^n+y^n\) は偶数である。

 

(2)

\(x+y=p\), \(xy=q\) とすれば、\(x,y\)は2次方程式 \(t^2-pt+q=0\) の2解です。係数が整数で解が整数にならない2次方程式はいくらでも存在するので、このうち係数が偶数であるもので条件に合うものを探します。

(答えの1例)
\(x+y=4\), \(xy=2\) のとき、\(x,y\)は2次方程式
\(t^2-4t+2=0\)
の2解であり、その解は \(t=2±\sqrt{2}\)

よって例は
\((x,y)=(2-\sqrt{2},2+\sqrt{2})\)

 

 

 

(例題2)
\(f_1(x)=1\),  \(f_2(x)=x\),  \(f_{n+2}(x)=xf_{n+1}(x)-f_{n}(x)\) (\(n=1,2,3,\cdots\)) によって定められた関数の列\(\{f_{n}(x)\}\)がある。

(1)\(f_{n}(x)\)は\(x\)の\((n-1)\)次の整式であることを証明せよ。
(2)\(0<θ<π\) のとき、\(f_{n}(2\cosθ)=\displaystyle\frac{\sin nθ}{\sinθ}\) が成り立つことを証明せよ。
(3)\(n≧2\) のとき、\(x\)の方程式 \(f_{n}(x)=0\) のすべての解は \(-2<x<2\) の範囲にあることを証明せよ。

 

 

3項間漸化式なので解けますが、式が複雑になり有益ではありません。
よって漸化式そのままの形で処理していきます。

(解答)
(1)

少しだけ実験してみると
\(f_1(x)=1\),  \(f_2(x)=x\),  \(f_{n+2}(x)=xf_{n+1}(x)-f_{n}(x)\) より
\(f_3(x)=x^2-1\)
\(f_4(x)=x^3-2x\)
となっていて確かに\((n-1)\)次式です。そもそも漸化式は前の項から次の項が求まる式なので、前の\(n=k\)の仮定から次の\(n=k+1\)の結論を導く帰納法と相性がよいです。よって帰納法で証明していきますが、3項間漸化式は前2項の情報が必要なので、帰納法の仮定は2つ必要です。

「\(f_{n}(x)\)は\(x\)の\((n-1)\)次の整式である」・・・①
ことを帰納法により証明する。

[1]\(n=1,2\)のとき
\(f_1(x)=1\), \(f_2(x)=x\)
より①は\(n=1,2\)で成立する。

[2]\(n=k,k+1\)のとき (\(n=1,2,3,\cdots\))
①が成り立つと仮定すると
\(f_{k}(x)\)は\((k-1)\)次式、\(f_{k+1}(x)\)は\(k\)次式である。

このとき漸化式
\(f_{k+2}(x)=xf_{k+1}(x)-f_{k}(x)\)
より、\(f_{k+2}(x)=x\cdot(k次式)-(k-1次式)\)
だから、\(f_{k+2}(x)\)は\((k+1)\)次式になる。
したがって、①は\(n=k+2\)のときも成立する。

[1][2]よりすべての自然数\(n\)について、\(f_{n}(x)\)は\(x\)の\((n-1)\)次の整式である。

 

(2)

同様に帰納法で証明していきます。三角関数の公式を駆使していきます。

「\(f_{n}(2\cosθ)=\displaystyle\frac{\sin nθ}{\sinθ}\)」・・・②
を帰納法で証明する。

漸化式より
\(f_{n+2}(2\cosθ)=2\cosθ\cdot f_{n+1}(2\cosθ)-f_{n}(2\cosθ)\)
\(f_1(2\cosθ)=1\),  \(f_2(2\cosθ)=2\cosθ\)

[1]\(n=1,2\) のとき
\(f_1(2\cosθ)=1=\displaystyle\frac{\sin θ}{\sinθ}\)
\(f_2(2\cosθ)=2\cosθ=\displaystyle\frac{2\sinθ\cosθ}{\sinθ}=\displaystyle\frac{\sin2θ}{\sinθ}\)
よって②は\(n=1,2\)で成立。

[2]\(n=k,k+1\) のとき (\(k=1,2,3,\cdots\))
②が成立すると仮定すると
\(f_{k}(2\cosθ)=\displaystyle\frac{\sin kθ}{\sinθ}\), \(f_{k+1}(2\cosθ)=\displaystyle\frac{\sin (k+1)θ}{\sinθ}\)

このとき
\(f_{k+2}(2\cosθ)=2\cosθ\cdot f_{k+1}(2\cosθ)-f_{k}(2\cosθ)\)

\(=\displaystyle\frac{2\sin (k+1)θ\cosθ-\sin kθ}{\sinθ}\)

(積和の公式から)

\(=\displaystyle\frac{\{\sin(k+2)θ+\sin kθ\}-\sin kθ}{\sinθ}\)

\(=\displaystyle\frac{\sin(k+2)θ}{\sinθ}\)

よって \(n=k+2\) のときも②は成立する。

[1][2]よりすべての自然数\(n\)で②は成立する。

 

(3)

\(f_{n}(x)=0\) の \(-2<x<2\) の解は \(x=2\cosθ\) (\(0<θ<π\)) と書けます。
よって(2)より、\(\displaystyle\frac{\sin nθ}{\sinθ}=0\) の解\(θ\)を求めていくことになります。

\(f_{n}(x)=0\) の \(-2<x<2\) の解は \(x=2\cosθ\) (\(0<θ<π\)) と書ける。

よって(2)より
\(f_{n}(2\cosθ)=\displaystyle\frac{\sin nθ}{\sinθ}=0\)
を解くと
\(\sin nθ=0\) より
\(0<nθ<nπ\) だから
\(nθ=π,2π,3π,\cdots,(n-1)π\)
\(θ=\displaystyle\frac{π}{n},\displaystyle\frac{2π}{n},\displaystyle\frac{3π}{n},\cdots,\displaystyle\frac{(n-1)π}{n}\)

ゆえに \(f_{n}(x)=0\) の解は
\(x=2\cos\displaystyle\frac{π}{n},2\cos\displaystyle\frac{2π}{n},2\cos\displaystyle\frac{3π}{n},\cdots,2\cos\displaystyle\frac{(n-1)π}{n}\)・・・③

\(-2<x<2\) の範囲でしか解を調べてないので、③が方程式\(f_{n}(x)=0\) のすべての解となることを確認にしておきます。
\(f_{n}(x)=0\) の解③はすべて異なり、全部で\(n-1\)個です。
そして(1)で示した \(f_{n}(x)\) が\(x\)の\((n-1)\)次式であることから、③がすべての解になっています。

\(\cosθ\) は \(0<θ<π\) の範囲で単調減少だから、③の解はすべて異なる。
また、(1)より\(f_{n}(x)\)が\(x\)の\((n-1)\)次式であることから、\(n-1\)個の解③が\(f_{n}(x)=0\)のすべての解である。

したがって\(f_{n}(x)=0\) のすべての解は \(-2<x<2\) の範囲にある。

 

 

 

以上になります。お疲れ様でした。
ここまで見ていただきありがとうございました。
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