一般項の予想と帰納法、n≦k の仮定

\(n≦k\) の仮定をする帰納法の例題です。

 

(例題1)
数列\(\{a_n\}\)が自然数\(n\)に対して、
\(a_{n}>0\)
\(a_1^3+a_2^3+\cdots+a_n^3=(a_1+a_2+\cdots+a_n)^2\)
を満たすとき、数列\(\{a_n\}\)の一般項を求めよ。

 

漸化式が直接解けない場合に有効なのが、一般項を予測して証明する方法です。(漸化式が解ける場合でも一応有効です)

(解答)
\(a_1^3+a_2^3+\cdots+a_n^3=(a_1+a_2+\cdots+a_n)^2\)・・・①

①に\(n=1\)を代入して
\(a_1^3=a_1^2\)
\(a_1^2(a_1-1)=0\)
\(a_n>0\) だから
\(a_1=1\)

②に\(n=2\)を代入して
\(a_1^3+a_2^3=(a_1+a_2)^2\)
\(a_1=1\) より
\(1+a_2^3=(1+a_2)^2\)
\(a_2(a_2-2)(a_2+1)=0\)
\(a_n>0\) だから
\(a_2=2\)

同様に \(a_3=3\) となるから
\(a_n=n\) と予測できる。

予測なので正しいかどうか証明します。
漸化式を用いるので相性のよい帰納法を選択しますが、\(a_{k+1}\)を求めるのに\(a_{1}~a_{k}\)が必要なので、仮定は\(n≦k\)と\(k\)以下の全体で設定します。・・・(注1)

\(a_n=n\)・・・②
を数学的帰納法で証明する。

[1]\(n=1\)のとき
\(a_1=1\) で②は成立。

[2]\(n≦k\) のとき (\(k=1,2,3,\cdots\))
②が成立すると仮定すると
\(a_1=1\), \(a_2=2\),\(\cdots\),\(a_k=k\)

ここで漸化式①に\(n=k+1\)を代入して・・・(注2)
\(a_1^3+a_2^3+\cdots+a_k^3+a_{k+1}^3=(a_1+a_2+\cdots+a_k+a_{k+1})^2\)

仮定より
\(1^3+2^3+\cdots+k^3+a_{k+1}^3=(1+2+\cdots+k+a_{k+1})^2\)

\(\displaystyle\frac{1}{4}k^2(k+1)^2+a_{k+1}^3=\{\displaystyle\frac{1}{2}k(k+1)+a_{k+1}\}^2\)

\(a_{k+1}^3-a_{k+1}^2-k(k+1)a_{k+1}=0\)

\(a_{k+1}(a_{k+1}+k)\{a_{k+1}-(k+1)\}=0\)

\(a_{k+1}>0\) だから
\(a_{k+1}=k+1\)
よって \(n=k+1\) でも②は成立

[1][2]よりすべての自然数\(n\)について
\(a_n=n\)

 

少しだけ補足しておきます。
(注1)について普通の\(n=k\)仮定の帰納法でも \(n=1\)成立→\(n=2\)成立→\(n=3\)成立 という構成なので\(n≦k\)仮定が必要ないと感じる人もいるかもしれませんが、\(a_{k+1}\)に必要なのは\(a_1~a_k\)なので、帰納法の構成としては\(n≦k\)のほうが良いです。
(注2)について与えられた漸化式はすべての\(n\)について成り立つので、こちらは自由に使ってよい式になります。よって\(n=k+1\)の代入はしても問題なしです。この例題については自由に使っていけないのは一般項\(a_n=n\)のほうの式です。そもそも一般項の式は証明すべき式です。

 

 

(例題2)
数列\(\{a_n\}\)は、すべての正の整数\(n\)に対して
\(0≦3a_n≦\displaystyle\sum_{k=1}^na_k\)
を満たしているとする。このとき、すべての\(n\)に対して\(a_n=0\)であることを数学的帰納法により示せ。

 

 

(解答)
「\(a_n=0\)」・・・①
を帰納法により示す。

\(0≦3a_n≦\displaystyle\sum_{k=1}^na_k\)・・・②

②は自由に使っていい式です。②式は不等式ですが、漸化式のようなものです。

[1]\(n=1\)のとき
②から \(0≦3a_1≦a_1\)
よって
\(0≦a_1≦0\) となるから
\(a_1=0\)
\(n=1\)で①は成立する。

②の右辺が和になっているので、今回も仮定は\(n≦k\)です。

[2]\(n≦k\)のとき
①が成立すると仮定すると
\(a_1=a_2=\cdots=a_k=0\)・・・③

このとき②で\(n=k+1\)として
\(0≦3a_{k+1}≦\displaystyle\sum_{i=1}^{k+1}a_i\)
(\(k\)が被るのでシグマの変数を\(i\)にしました)

よって
\(0≦3a_{k+1}≦a_1+a_2+\cdots+a_k+a_{k+1}\)
仮定③より
\(0≦3a_{k+1}≦a_{k+1}\)
ゆえに
\(0≦a_{k+1}≦0\)
\(a_{k+1}=0\)

したがって、\(n=k+1\)でも①は成立。

[1][2]よりすべての\(n\)に対して\(a_n=0\)である。

 

 

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見ていただきありがとうございました。
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