確率・場合の数と漸化式の融合問題について見ていきます。
漸化式を立てる際には、2項間の場合では「\(n+1\)と\(n\)の関係」に着目し、\(n\)から\(n+1\)にどう状態が変化するのか考えるのが基本ですが、時には初手\(n=1\)についての場合分けを考えることもあります。
(例題1)
図のような正方形の4頂点\(A,B,C,D\)を次の規則で移動する動点\(Q\)がある。サイコロを振って\(1\)の目が出れば反時計回りに隣の頂点に移動し、\(1\)以外の目が出れば時計回りに隣の頂点に移動する。\(Q\)は最初\(A\)にあるものとし、\(n\)回移動した後の位置を\(Q_n\) (\(n=1,2,\cdots\)) とする。\(Q_{2n}=A\) である確率を\(a_n\)とおく。
(1)\(a_1\)を求めよ。
(2)\(a_{n+1}\)を\(a_n\)を用いて表せ。
(3)\(a_n\)を求めよ。
(解答)
(1)
\(a_1\)は、\(Q_2=A\)である確率つまり2回の移動で\(Q\)が\(A\)にある確率である。
最初\(Q\)は\(A\)にあるので、動き方は \(A→D→A\), \(A→B→A\) の2通りだから
\(a_1=\displaystyle\frac{5}{6}\cdot\displaystyle\frac{1}{6}+\displaystyle\frac{1}{6}\cdot\displaystyle\frac{5}{6}\)
\(=\displaystyle\frac{5}{18}\)
(2)
\(2n\)回の移動では\(Q\)は\(A\)か\(C\)にある。
\(a_{n+1}\)は \(2(n+1)=2n+2\)回 の移動で\(Q\)が\(A\)にある確率で、\(2n+2\)回の移動で\(Q\)が\(A\)にあるのは
(ア)\(Q_{2n}=A\) のとき \(A→D→A\), \(A→B→A\) と動く
(イ)\(Q_{2n}=C\) のとき \(C→D→A\), \(C→B→A\) と動く
場合がある。\(Q_{2n}=C\) である確率は \(1-a_n\) だから
\(a_{n+1}=a_n(\displaystyle\frac{5}{6}\cdot\displaystyle\frac{1}{6}+\displaystyle\frac{1}{6}\cdot\displaystyle\frac{5}{6})+(1-a_n)(\displaystyle\frac{1}{6}\cdot\displaystyle\frac{1}{6}+\displaystyle\frac{5}{6}\cdot\displaystyle\frac{5}{6})\)
よって
\(a_{n+1}=-\displaystyle\frac{4}{9}a_n+\displaystyle\frac{13}{18}\)
(3)
(1)(2)より
\(a_1=\displaystyle\frac{5}{18}\)
\(a_{n+1}=-\displaystyle\frac{4}{9}a_n+\displaystyle\frac{13}{18}\)
特性方程式 \(x=-\displaystyle\frac{4}{9}x+\displaystyle\frac{13}{18}\) を解くと
\(x=\displaystyle\frac{1}{2}\) だから、漸化式は次のように変形できる。
\(a_{n+1}-\displaystyle\frac{1}{2}=-\displaystyle\frac{4}{9}(a_n-\displaystyle\frac{1}{2})\)
よって
\(a_n-\displaystyle\frac{1}{2}=(a_1-\displaystyle\frac{1}{2})(-\displaystyle\frac{4}{9})^{n-1}=-\displaystyle\frac{4}{18}(-\displaystyle\frac{4}{9})^{n-1}\)
\(=\displaystyle\frac{1}{2}(-\displaystyle\frac{4}{9})^{n}\)
したがって
\(a_n=\displaystyle\frac{1}{2}+\displaystyle\frac{1}{2}(-\displaystyle\frac{4}{9})^{n}\)
(例題2)
(1)階段を、下から一段ずつか一段おきに登る。階段が\(n\)段のときの登り方の総数を\(a_n\)通りとするとき、\(a_{n+2}\)を\(a_{n+1},a_{n}\)を用いて表せ。
(2)全部で\(11\)段ある階段を、下から一段ずつか一段おきに登る。登り方の総数を求めよ。
(解答)
(1)
\(n+2\)段ある階段について\(n+2\)段目に到達するのは、「\(n+1\)段目から1段登るか、\(n\)段目から2段登る(1つ飛ばし)か」の場合がある。\(n+1\)段目に足をつけるときの登り方の総数は\(a_{n+1}\)通りで、\(n\)段目に足をつけるときも同様に\(a_n\)通りだから
\(a_{n+2}=a_{n+1}+a_{n}\)
(別解)
最初に1段登るか2段登るかに着目してもよいです。
最初に1段登るとき、残りは\(n+1\)段だから \(a_{n+1}\)通り
最初に2段登るとき、残りは\(n\)段だから \(a_n\)通り
よって
\(a_{n+2}=a_{n+1}+a_{n}\)
(2)
1段の階段の登り方は1通りで \(a_1=1\)
2段の階段の登り方は、1段→1段 または 2段(1つ飛ばし) の2通りだから \(a_2=2\)
\(a_{n+2}=a_{n+1}+a_{n}\)
より、\(a_3,a_4,\cdots\) と順に求めていくと
\(a_3=a_2+a_1=3\)
\(a_4=a_3+a_2=5\)
\(a_5=8\)
\(a_6=13\)
\(a_7=21\)
\(a_8=34\)
\(a_9=55\)
\(a_{10}=89\)
\(a_{11}=144\)
したがって\(11\)段の階段の登り方は\(144\)通り。
仮に(1)の誘導がない場合には、漸化式を自分で立てるか直接計算するかになります。直接計算の方法としては、1段と2段の登り方をそれぞれ1,2として、数字1,2の並べ方を階段の登り方と対応させると、数字の並べ方の総数が登り方の総数になります。(例えば、 1,2,2,1,2,1,2 は1段→2段→2段・・・という登り方に対応)
2段登る回数は階段が全部で11段なので\(0,1,2,3,4,5\)回のいずれかで、それぞれの場合で並べ方を数えて総数を求めればよいです。
以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見ていただきありがとうございました。
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