内積の図形的意味①

内積の図形的意味を利用する問題について見ていきます。

 

(例題1)
\(△ABC\)において、辺\(CA\)の垂直2等分線と辺\(CB\)の垂直2等分線の交点を\(P\)とし、\(\overrightarrow{CA}=\vec{a}\),  \(\overrightarrow{CB}=\vec{b}\), \(\overrightarrow{CP}=\vec{p}\) とする。\(|\vec{a}|=2\), \(|\vec{b}|=4\), 内積 \(\vec{a}\cdot\vec{b}=6\) のとき、次の問いに答えよ。

(1)内積 \(\vec{a}\cdot\vec{p}\), \(\vec{b}\cdot\vec{p}\) を求めよ。
(2)\(\vec{p}=s\vec{a}+t\vec{b}\) をみたす\(s,t\)の値を求めよ。

 

 

誘導にのるなら内積の図形的意味を考えることになります。
式のみで処理するなら(2)の\(s,t\)を先に求める方法になります(別解)。

(解答)
(1)

\(\vec{a}\cdot\vec{p}=|\vec{a}||\vec{p}|\cosθ_1\) 、 \(CA\)の中点を\(M\)とすると、\(|\vec{p}|\cosθ_1\)が\(CM\)なので、\(\vec{a}\cdot\vec{p}=CA×CM\) です。\(\vec{b}\cdot\vec{p}\) も同様に処理できます。
なお解答にはさほど影響しませんが、条件より \(\vec{a},\vec{b}\) のなす角を\(θ\)とすると、\(\cosθ=\displaystyle\frac{6}{2\cdot4}=\displaystyle\frac{3}{4}\) なので、\(30°<θ<45°\) です。図示するときの目安にしてください。

内積の図形意味① 例題1-1

図より
\(\vec{a}\cdot\vec{p}=|\vec{a}||\vec{p}|\cosθ_1=CA×CM\)
\(=2×1\)\(=2\)

\(\vec{b}\cdot\vec{p}=|\vec{b}||\vec{p}|\cosθ_2=CB×CN\)
\(=4×2\)\(=8\)

 

(2)

(1)の内積を利用して\(s,t\)を求めます。
なお、\(\vec{a},\vec{b}\)は\(\vec{0}\)でなく、平行でないので1次独立。よって\(s,t\)はただ1通り存在することになります。

\(\vec{p}=s\vec{a}+t\vec{b}\)

(1)より
\(\vec{a}\cdot\vec{p}=2\) だから
\(\vec{a}\cdot(s\vec{a}+t\vec{b})=2\)
\(s|\vec{a}|^2+t\vec{a}\cdot\vec{b}=2\)
よって
\(4s+6t=2\)・・・①

\(\vec{b}\cdot\vec{p}=8\) だから
\(\vec{b}\cdot(s\vec{a}+t\vec{b})=8\)
\(s\vec{a}\cdot\vec{b}+t|\vec{b}|^2=8\)
よって
\(6s+16t=8\)・・・②

①②より
\(s=-\displaystyle\frac{4}{7}\), \(t=\displaystyle\frac{5}{7}\)

 

(別解)(2)を先に解く

2つの垂直条件から\(s,t\)を決定します。

ベクトル図形意味① 例題1-2

\(\overrightarrow{MP}=\overrightarrow{CP}-\overrightarrow{CM}\)
\(=s\vec{a}+t\vec{b}-\displaystyle\frac{1}{2}\vec{a}\)
\(=(s-\displaystyle\frac{1}{2})\vec{a}+t\vec{b}\)

\(CA \perp MP\) より
\(\vec{a}\cdot\{(s-\displaystyle\frac{1}{2})\vec{a}+t\vec{b}\}=0\)
展開すると
\(4s-2+6t=0\)・・・(i)

\(\overrightarrow{NP}=\overrightarrow{CP}-\overrightarrow{CN}\)
\(=s\vec{a}+t\vec{b}-\displaystyle\frac{1}{2}\vec{b}\)
\(=s\vec{a}+(t-\displaystyle\frac{1}{2})\vec{b}\)

\(CB \perp NP\) より
\(\vec{b}\cdot\{(s\vec{a}+(t-\displaystyle\frac{1}{2})\vec{b}\}=0\)
展開すると
\(6s+16t-8=0\)・・・(ii)

(i)(ii)より
\(s=-\displaystyle\frac{4}{7}\), \(t=\displaystyle\frac{5}{7}\)

また(1)については
\(\vec{a}\cdot\vec{p}=\vec{a}\cdot(-\displaystyle\frac{4}{7}\vec{a}+\displaystyle\frac{5}{7}\vec{b})\)
\(=-\displaystyle\frac{16}{7}+\displaystyle\frac{30}{7}\)
\(=2\)

\(\vec{b}\cdot\vec{p}=\vec{b}\cdot(-\displaystyle\frac{4}{7}\vec{a}+\displaystyle\frac{5}{7}\vec{b})\)
\(=-\displaystyle\frac{24}{7}+\displaystyle\frac{80}{7}\)
\(=8\)

 

 

 

(例題2)
(1)平面上に2点\(A,X\)がある。原点\(O\)と点\(A\)を通る直線に点\(X\)から下した垂線の足を\(H\)とする。\(\overrightarrow{OH}=t\overrightarrow{OA}\)と表すとき、
\(\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OX}=\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OH}=t|\overrightarrow{OA}|^2\) であることを示せ。

(2)平面上に点\(A(3,2)\)と、4点 \(P(-4,1)\), \(Q(-2,1)\), \(R(-2,3)\), \(S(-4,3)\) を頂点とする正方形がある。いま、動点\(X\)がこの正方形の辺上を1周するとき、\(\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OX}\)のとり得る値の範囲を求めよ。

 

 

 

(解答)
(1)

内積の図形的意味を考えても分かりますが、式で示すこともできます。

内積図形意味①例題2-1

\(\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OX}\)
\(=\overrightarrow{OA}\cdot(\overrightarrow{OH}+\overrightarrow{HX})\)
\(=\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OH}+\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{HX}\)
\(=\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OH}\) (\(∵\overrightarrow{OA}\perp\overrightarrow{HX}\))
\(=\overrightarrow{OA}\cdot t\overrightarrow{OA}\)
\(=t|\overrightarrow{OA}|^2\)

 

(2)

(1)より、\(t\)の範囲を求めればよいことになります。
\(t\)の範囲は、\(\overrightarrow{OH}=t\overrightarrow{OA}\) より\(X\)から下した垂線の足の\(H\)がどの範囲にあるかによって決まるので、\(OA\)に垂直な直線を正方形と交わるように動かすことで\(H\)の範囲をとらえていきます。
なおこの問題も誘導を無視する別解があります。

内積図形意味① 例題2-2

\(\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OX}=t|\overrightarrow{OA}|^2\) より
\(t\)のとり得る範囲を調べればよい。

\(\overrightarrow{OH}=t\overrightarrow{OA}\) だから、\(X\)から下した垂線の足\(H\)の動く範囲を考えればよく、\(OA\)に垂直な直線が正方形と交わる場合を考えると、垂線の足\(H\)は図の\(H_1\)から\(H_2\)までの間を動く。

よって \(\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OX}\) の最小値は \(H=H_2\) つまり \(X=P\) のときで
\(\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OX}=(3,2)\cdot(-4,1)\)\(=-10\)

最大値は \(H=H_1\) つまり \(X=R\) のときで (このとき\(H_1\)は原点\(O\)になる)
\(\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OX}=(3,2)\cdot(-2,3)\)\(=0\)

したがって
\(-10≦\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OX}≦0\)

 

(別解)

正方形の辺上の点の座標を媒介変数を用いて表して、内積を計算しても解くことができます。4辺で直線の式が異なるので4つに場合分けすることになりますが、辺が \(x\)軸 または \(y\)軸 に平行なので、座標設定や計算はそこまで複雑ではありません。

内積図形意味① 例題2-3

①\(X\)が\(PQ\)上にあるとき
\(X(k,1)\) (\(-4≦k≦-2\)) とおけて
\(\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OX}=(3,2)\cdot(k,1)=3k+2\)
よって \(-10≦\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OX}≦-4\)

②\(X\)が\(QR\)上にあるとき
\(X(-2,k)\) (\(1≦k≦3\)) とおけて
\(\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OX}=(3,2)\cdot(-2,k)=-6+2k\)
よって \(-4≦\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OX}≦0\)

③\(X\)が\(RS\)上にあるとき
\(X(k,3)\) (\(-4≦k≦-2\)) とおけて
\(\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OX}=(3,2)\cdot(k,3)=3k+6\)
よって \(-6≦\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OX}≦0\)

④\(X\)が\(SP\)上にあるとき
\(X(-4,k)\) (\(1≦k≦3\)) とおけて
\(\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OX}=(3,2)\cdot(-4,k)=-12+2k\)
よって \(-10≦\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OX}≦-6\)

以上から
\(-10≦\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OX}≦0\)

 

 

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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