積と商の微分について見ていきます。
・積の微分
これは、例えば \((x^3+x^2+1)(x^2+1)\) を考えると、展開すると5次式になるので微分すると4次式なりますが(これは正しい)、微分したものどうしの積だと (2次式)×(1次式) なので3次式なり、辻褄が合わないことからすぐに分かります。
正しい積の微分公式について見ていきます。
関数 \(f(x),g(x)\) がそれぞれ微分可能であるとき、積 \(f(x)g(x)\) の導関数は次のようになります。
\(\{f(x)g(x)\}’=f'(x)g(x)+f(x)g'(x)\)
(解説)
微分の定義から導くことが可能です。このとき余分な項(あったら嬉しい項)を加えて(除いて)、調整する操作をします。
\(\{f(x)g(x)\}’\)
\(=\displaystyle\lim_{h \to 0}\displaystyle\frac{f(x+h)g(x+h)-f(x)g(x)}{h}\)
分子で \(f(x)g(x+h)\) を除いて加えると (\(f(x+h)g(x)\)でもよい)
\(=\displaystyle\lim_{h \to 0}\displaystyle\frac{f(x+h)g(x+h)\color{blue}{-f(x)g(x+h)+f(x)g(x+h)}-f(x)g(x)}{h}\)
(2項ずつまとめて)
\(=\displaystyle\lim_{h \to 0}\left\{\displaystyle\frac{f(x+h)-f(x)}{h}\cdot g(x+h)+f(x)\cdot\displaystyle\frac{g(x+h)-g(x)}{h}\right\}\)
\(=f'(x)g(x)+f(x)g'(x)\)
(\(g(x)\)は微分可能だから連続。よって \(\displaystyle\lim_{h \to 0}g(x+h)=g(x)\))
また、この積の微分を利用すると3つの積の導関数を導くことができます。\(h(x)\)も微分可能な関数として、
\(\{f(x)g(x)h(x)\}’\)
\(=\{f(x)g(x)×h(x)\}’\)
\(=\{f(x)g(x)\}’h(x)+\{f(x)g(x)\}h'(x)\)
\(=\{f'(x)g(x)+f(x)g'(x)\}h(x)+f(x)g(x)h'(x)\)
\(=f'(x)g(x)h(x)+f(x)g'(x)h(x)+f(x)g(x)h'(x)\)
(1個だけ微分して残りはそのままにしたものを全部考える)
・商の微分
関数\(f(x),g(x)\)がそれぞれ微分可能であるとき、商 \(\displaystyle\frac{f(x)}{g(x)}\) の導関数は次のようになります。
\(\left\{\displaystyle\frac{f(x)}{g(x)}\right\}’=\displaystyle\frac{f'(x)g(x)-f(x)g'(x)}{\{g(x)\}^2}\)
(解説)
やや複雑な式ですが、分母が2乗された式、分子は積の微分に近い式(差になっている)です。
証明は積の微分のようにダイレクトに証明する方法と、一旦 \(\left\{\displaystyle\frac{1}{g(x)}\right\}’\) を考えて積の微分を利用する方法があります。
(証明1)
\(\left\{\displaystyle\frac{f(x)}{g(x)}\right\}’\)\(=\displaystyle\lim_{h \to 0}\displaystyle\frac{\displaystyle\frac{f(x+h)}{g(x+h)}-\displaystyle\frac{f(x)}{g(x)}}{h}\)
(分子を通分して計算すると)
\(=\displaystyle\lim_{h \to 0}\displaystyle\frac{f(x+h)g(x)-f(x)g(x+h)}{h}\cdot\displaystyle\frac{1}{g(x+h)g(x)}\)
(\(f(x)g(x)\)を除いて加える)
\(=\displaystyle\lim_{h \to 0}\displaystyle\frac{f(x+h)g(x)\color{blue}{-f(x)g(x)+f(x)g(x)}-f(x)g(x+h)}{h}\cdot\displaystyle\frac{1}{g(x+h)g(x)}\)
\(=\displaystyle\lim_{h \to 0}\left\{\displaystyle\frac{f(x+h)-f(x)}{h}\cdot g(x)-f(x)\cdot\displaystyle\frac{g(x+h)-g(x)}{h}\right\}\cdot\displaystyle\frac{1}{g(x+h)g(x)}\)
\(=\displaystyle\frac{f'(x)g(x)-f(x)g'(x)}{\{g(x)\}^2}\)
(\(g(x)\)の連続性により、\(g(x+h)→g(x)\))
(証明2)
\(\left\{\displaystyle\frac{1}{g(x)}\right\}’=\displaystyle\lim_{h \to 0}\displaystyle\frac{\displaystyle\frac{1}{g(x+h)}-\displaystyle\frac{1}{g(x)}}{h}\)
\(=\displaystyle\lim_{h \to 0}-\displaystyle\frac{g(x+h)-g(x)}{h}\cdot\displaystyle\frac{1}{g(x+h)g(x)}\)
\(=-\displaystyle\frac{g'(x)}{\{g(x)\}^2}\) (\(g(x)\)の連続性より、\(g(x+h)→g(x)\))
よって積の微分より
\(\left\{\displaystyle\frac{f(x)}{g(x)}\right\}’=\left\{f(x)\cdot\displaystyle\frac{1}{g(x)}\right\}’\)
\(=f'(x)\displaystyle\frac{1}{g(x)}+f(x)\cdot\left\{-\displaystyle\frac{g'(x)}{\{g(x)\}^2}\right\}\)
(通分して整理すると)
\(=\displaystyle\frac{f'(x)g(x)-f(x)g'(x)}{\{g(x)\}^2}\)
(例題)次の関数を微分せよ。
(1)\(y=(x^2-x+1)(x^3+x-1)\)
(2)\(y=\displaystyle\frac{2x^2+5}{x^3+1}\)
(解答)
(1)
\(y=(x^2-x+1)(x^3+x-1)\)
\(y’=(2x-1)(x^3+x-1)+(x^2-x+1)(3x^2+1)\)
\(=(2x^4-x^3+2x^2-3x+1)+(3x^4-3x^3+4x^2-x+1)\)
\(=5x^4-4x^3+6x^2-4x+2\)
(2)
\(y=\displaystyle\frac{2x^2+5}{x^3+1}\)
\(y’=\displaystyle\frac{4x(x^3+1)-(2x^2+5)\cdot3x^2}{(x^3+1)^2}\)
\(=\displaystyle\frac{-2x^4-15x^2+4x}{(x^3+1)^2}\)
以上になります。お疲れ様でした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
next→合成関数の微分 back→導関数の定義と性質