引き続き水の量の変化の例題です。
(例題1)
容器の底にある穴から\(1\)秒間に流出する水の量は、水の深さの平方根に比例する。曲線 \(y=x^2\) (\(0≦y≦a\), \(a>0\)) を\(y\)軸のまわりに1回転して得られる容器 (\(y\)軸は鉛直に保たれているものとする) の底から、1秒間に流出する水量は水の深さが \(a(cm)\) のとき \(v(cm^3)\) である。
(1)深さ \(\displaystyle\frac{a}{2}(cm)\) のとき水面の降下する速さを求めよ。
(2)満水の容器が空になるまでの所要時間を求めよ。
(解答)
(1)
水の深さが\(a\)である(満水である)時刻を \(t=0\) として、\(t\)秒後の水量を\(V(t) (cm^3)\)、水の深さを\(h(cm)\) とする。
流出する水の量は、水の深さの平方根に比例するから\(k\)を正の定数として
\(\displaystyle\frac{dV}{dt}=-k\sqrt{h}\)・・・①
(題意に沿って\(-k\)が負になるようにしましたが、単に定数とおいても解くことができます)
条件より\(k\)の値を求めると、\(h=a\) のとき \(\displaystyle\frac{dV}{dt}=-v\) (符号がつくことに注意)だから
\(-v=-k\sqrt{a}\)
\(k=\displaystyle\frac{v}{\sqrt{a}}\)
これを①に代入すると
\(\displaystyle\frac{dV}{dt}=-\displaystyle\frac{v}{\sqrt{a}}\cdot\sqrt{h}\)・・・②
また\(t\)秒後の体積\(V\)は、水深が\(h\)であるから
\(V=\displaystyle\int_{0}^{h}πx^2dy\)
\(V=\displaystyle\int_{0}^{h}πydy\)
(このまま積分計算してもよいが、\(\displaystyle\frac{dV}{dt}\) が欲しいので微分します)
両辺\(t\)で微分すると
\(\displaystyle\frac{dV}{dt}=πh\cdot\displaystyle\frac{dh}{dt}\)・・・③
②③より
\(πh\cdot\displaystyle\frac{dh}{dt}=-\displaystyle\frac{v}{\sqrt{a}}\cdot\sqrt{h}\)
よって \(h>0\) のとき
\(\displaystyle\frac{dh}{dt}=-\displaystyle\frac{v}{π\sqrt{a}}\cdot\displaystyle\frac{1}{\sqrt{h}}\)・・・④
したがって深さ \(\displaystyle\frac{a}{2}(cm)\) のとき水面の降下する速さは、④に\(h=\displaystyle\frac{a}{2}\)を代入して絶対値をとると
\(\left|\displaystyle\frac{dh}{dt}\right|=\left|-\displaystyle\frac{v}{π\sqrt{a}}\cdot\displaystyle\frac{1}{\sqrt{\displaystyle\frac{a}{2}}}\right|\)
\(=\displaystyle\frac{\sqrt{2}v}{πa}(cm/秒)\)
(2)
(1)の④より
\(\sqrt{h}\cdot\displaystyle\frac{dh}{dt}=-\displaystyle\frac{v}{π\sqrt{a}}\)
両辺\(t\)で積分(不定積分)すると
\(\displaystyle\int\sqrt{h}\cdot\displaystyle\frac{dh}{dt}dt=\displaystyle\int(-\displaystyle\frac{v}{π\sqrt{a}})dt\)
左辺は置換積分により
\(\displaystyle\int\sqrt{h}\ dh=\displaystyle\int(-\displaystyle\frac{v}{π\sqrt{a}})dt\)
\(\displaystyle\frac{2}{3}h^{\frac{3}{2}}=-\displaystyle\frac{v}{π\sqrt{a}}t+C\)
\(t=0\) のとき \(h=a\) (満水) なので
\(\displaystyle\frac{2}{3}a^{\frac{3}{2}}=C\)
よって
\(\displaystyle\frac{2}{3}h^{\frac{3}{2}}=-\displaystyle\frac{v}{π\sqrt{a}}t+\displaystyle\frac{2}{3}a^{\frac{3}{2}}\)
したがって容器が空になる時刻は、\(h=0\) を代入して・・・(注)
\(0=-\displaystyle\frac{v}{π\sqrt{a}}t+\displaystyle\frac{2}{3}a^{\frac{3}{2}}\)
\(t=\displaystyle\frac{2}{3}a^{\frac{3}{2}}\cdot\displaystyle\frac{π\sqrt{a}}{v}\)
\(=\displaystyle\frac{2πa^2}{3v}(秒)\)
(注)
途中から\(h>0\) で処理していますが、\(h \to +0 \) として \(t\)の連続性により\(h=0\) を代入しています。
(参考)
空になる時刻は定積分を用いても解くことができます。
\(\sqrt{h}\cdot\displaystyle\frac{dh}{dt}=-\displaystyle\frac{v}{π\sqrt{a}}\)
容器が空になる時刻を\(T\)として、積分区間を\(0\)から\(T\)として\(t\)で積分すると
\(\displaystyle\int_{0}^{T}\sqrt{h}\cdot\displaystyle\frac{dh}{dt}dt=\displaystyle\int_{0}^{T}(-\displaystyle\frac{v}{π\sqrt{a}})dt\)
左辺は置換積分により
(積分区間の対応に注意。\(t=0\) のときは満水だから\(h=a\)、\(t=T\)のときは空だから\(h=0\))
\(\displaystyle\int_{a}^{0}\sqrt{h}\ dh=\displaystyle\int_{0}^{T}(-\displaystyle\frac{v}{π\sqrt{a}})dt\)
よって
\(T=\displaystyle\frac{π\sqrt{a}}{v}\displaystyle\int_{0}^{a}\sqrt{h}\ dh\)
\(=\displaystyle\frac{π\sqrt{a}}{v}\cdot \displaystyle\frac{2}{3}a^{\frac{3}{2}}\)
\(=\displaystyle\frac{2πa^2}{3v}\)
(別解)逆関数の微分を利用
\(\displaystyle\frac{dh}{dt}=-\displaystyle\frac{v}{π\sqrt{a}}\cdot\displaystyle\frac{1}{\sqrt{h}}\)・・・④
より
\(\displaystyle\frac{dt}{dh}=-\displaystyle\frac{π\sqrt{a}}{v}\cdot\sqrt{h}\)
\(h\)で積分して
\(t=\displaystyle\int(-\displaystyle\frac{π\sqrt{a}}{v}\cdot\sqrt{h})dh\)
\(=-\displaystyle\frac{π\sqrt{a}}{v}\cdot\displaystyle\frac{2}{3}h^{\frac{3}{2}}+C\)・・・⑤
\(t=0\) のとき \(h=a\) だから
\(0=-\displaystyle\frac{π\sqrt{a}}{v}\cdot\displaystyle\frac{2}{3}a^{\frac{3}{2}}+C\)
\(C=\displaystyle\frac{2πa^2}{3v}\)
よって空になる時刻は⑤で\(h=0\)として
\(t=C=\displaystyle\frac{2πa^2}{3v}\)
(例題2)
\(H>0\),\(R>0\) とする。座標空間内において、原点\(O\)と点\(P(R,0,H)\)を結ぶ線分を、\(z\)軸の周りに回転させてできる容器がある。この容器に水を満たし、原点から水面までの高さが\(h\)のとき単位時間あたりの排水量が、\(\sqrt{h}\)となるように水を排出する。すなわち、時刻\(t\)までに排出された水の総量を\(V(t)\)とおくとき、\(\displaystyle\frac{dV}{dt}=\sqrt{h}\) が成り立つ。このとき、すべての水を排出するのに要する時間を求めよ。
(解答)
(まず排出された水量\(V\)を求めます)
時刻\(t\)における水面の高さを\(h(t)\)とする。このとき、円である水面の半径を\(r\)とおくと
\(r:h=R:H\) より
\(r=\displaystyle\frac{Rh}{H}\)
よって\(V\)は
\(V=\displaystyle\frac{1}{3}πR^2H-\displaystyle\frac{1}{3}π(\displaystyle\frac{Rh}{H})^2h\)
\(=\displaystyle\frac{1}{3}πR^2H-\displaystyle\frac{1}{3}π(\displaystyle\frac{R}{H})^2h^3\)
\(t\)で微分して
\(\displaystyle\frac{dV}{dt}=-\displaystyle\frac{1}{3}π(\displaystyle\frac{R}{H})^2\cdot3h^2\cdot\displaystyle\frac{dh}{dt}\)
これと条件式から
\(\sqrt{h}=-π(\displaystyle\frac{R}{H})^2h^2\cdot\displaystyle\frac{dh}{dt}\)・・・① (変数分離型の微分方程式)
(以下例題1と同様に定積分でも逆関数の微分を利用しても解けます。)
よって\(h>0\)のとき①より
\(1=-π(\displaystyle\frac{R}{H})^2h^{\frac{3}{2}}\cdot\displaystyle\frac{dh}{dt}\)
両辺\(t\)で積分して
\(\displaystyle\int dt=-π(\displaystyle\frac{R}{H})^2\displaystyle\int h^{\frac{3}{2}}\cdot\displaystyle\frac{dh}{dt}dt\)
\(\displaystyle\int dt=-π(\displaystyle\frac{R}{H})^2\displaystyle\int h^{\frac{3}{2}}dh\)
\(C\)を定数として
\(t=-π(\displaystyle\frac{R}{H})^2\cdot\displaystyle\frac{2}{5}h^{\frac{5}{2}}+C\)・・・②
初期条件は \(t=0\) のとき \(h=H\) だから
\(0=-π(\displaystyle\frac{R}{H})^2\cdot\displaystyle\frac{2}{5}H^{\frac{5}{2}}+C\)
\(C=\displaystyle\frac{2}{5}πR^2H^{\frac{1}{2}}\)
ゆえにすべての水を排出するのに掛かる時間は②で \(h=0\) として(同様に\(h \to +0\) として\(t\)の連続性より)
\(t=C=\displaystyle\frac{2}{5}πR^2\sqrt{H}\)
以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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