漸化式と複素数

複素数の漸化式に関する例題です。

複素数の漸化式であっても、やることは実数の場合とさほど変わりません。

 

(例題)
複素数\(a_n\) (\(n=1,2,\cdots\)) をつぎのように定める。
\(a_1=1+i\)
\(a_{n+1}=\displaystyle\frac{a_n}{2a_n-3}\)
ただし、\(i\)は虚数単位である。このとき以下の問いに答えよ。

(1)複素数平面上の3点\(0,a_1,a_2\)を通る円の方程式を求めよ。
(2)すべての\(a_n\)は(1)で求めた円上にあることを示せ。

 

(解答)
(1)

\(a_2\)を漸化式から求めて、3点を通る円の方程式を求めます。
円の方程式は複素数形式にするか、実数平面形式にするかどちらでも構いません。(答えは複素数形式にしたほうがよい)
円の方程式は原点\(O\)を通ることに着目して少し簡略化します。

\(a_1=1+i\)
\(a_{n+1}=\displaystyle\frac{a_n}{2a_n-3}\) より

\(a_2=\displaystyle\frac{1+i}{-1+2i}=\displaystyle\frac{(1+i)(-1-2i)}{5}\)

\(=\displaystyle\frac{1-3i}{5}\)

円は原点を通るから
\(|z-α|=|α|\)・・・(※)
と表せる。両辺2乗して整理すると
\(|z|^2-\bar{α}z-α\bar{z}=0\)・・・①

①は\(a_1,a_2\)を通るから
\(2-\bar{α}(1+i)-α(1-i)=0\)・・・②
\(\displaystyle\frac{10}{25}-\bar{α}\cdot\displaystyle\frac{1-3i}{5}-α\cdot\displaystyle\frac{1+3i}{5}=0\)・・・③

整理して
\((1+i)\bar{α}+(1-i)α=2\)・・・②’
\((1-3i)\bar{α}+(1+3i)α=2\)・・・③’

②’×(1-3i)ー③'(1+i) より \(\bar{α}\) を消去すると
\(\{(1-i)(1-3i)-(1+i)(1+3i)\}α=2(1-3i)-2(1+i)\)
整理して
\(-8iα=-8i\)
よって \(α=1\)

したがって円の方程式は(※)より
\(|z-1|=1\)

 

(別解)
\(a_1=1+i\)、\(a_2=\displaystyle\frac{1}{5}-\displaystyle\frac{3}{5}i\)
円は原点を通るので実数平面で
\(x^2+y^2+ax+by=0\)・・・(i)
(定数項なし)と表せる。

(i)は、\((1,1),\ (\displaystyle\frac{1}{5},-\displaystyle\frac{3}{5})\) を通るから
\(1+1+a+b=0\)・・・(ii)
\(\displaystyle\frac{1}{25}+\displaystyle\frac{9}{25}+\displaystyle\frac{1}{5}a-\displaystyle\frac{3}{5}b=0\)・・・(iii)

(ii)(iii)より
\(a=-2\)、\(b=0\)
よって(i)は
\(x^2+y^2-2x=0\)
\((x-1)^2+y^2=1\)
となるので、求める円の方程式は
\(|z-1|=1\)

 

(2)

漸化式と相性のいい数学的帰納法を使うとよいでしょう。
もしくは、漸化式が逆数をとるだけで簡単に解ける形なので、一般項を具体的に求める方法もあります。

(解答1)数学的帰納法
\(a_{n+1}=\displaystyle\frac{a_n}{2a_n-3}\)

すべての自然数\(n\)について
\(|a_n-1|=1\)・・・④
が成り立つことを数学的帰納法で示す。

(i)\(n=1\) のとき
\(a_1=1+i\) だから、④は成り立つ。

(ii)\(n=k\) (\(k=1,2,\cdots\)) のとき④が成り立つと仮定する。つまり
\(|a_k-1|=1\)・・・⑤

漸化式から \(|a_{k+1}-1|\) を\(a_k\)で表しますが、⑤が使えるように2乗した式で検討します。⑤ももちろん2乗します。

このとき
\(|a_{k+1}-1|^2=\left|\displaystyle\frac{a_k}{2a_k-3}-1\right|^2\)

\(=\left|\displaystyle\frac{-a_k+3}{2a_k-3}\right|^2\)

\(=\left(\displaystyle\frac{-a_k+3}{2a_k-3}\right)\overline{\left(\displaystyle\frac{-a_k+3}{2a_k-3}\right)}\)

\(=\displaystyle\frac{|a_k|^2-3(a_k+\bar{a_k})+9}{4|a_k|^2-6(a_k+\bar{a_k})+9}\)

⑤より
\((a_k-1)\overline{(a_k-1)}=1^2\) であり
\(|a_k|^2=a_k+\bar{a_k}\)
となるから

\(|a_{k+1}-1|^2=\displaystyle\frac{|a_k|^2-3|a_k|^2+9}{4|a_k|^2-6|a_k|^2+9}\)

\(=\displaystyle\frac{-2|a_k|^2+9}{-2|a_k|^2+9}\)

\(=1\)

ゆえに \(n=k+1\) のときも④は成り立つ。

以上よりすべての自然数\(n\)について
\(|a_n-1|=1\)・・・④
が成り立つので、すべての\(a_n\)は 円:\(|z-1|=1\) 上にある

 

(解答2)一般項を求める方法

逆数をとりますが、\(a_n≠0\) の確認はしておきます。

\(a_1=1+i\)
\(a_{n+1}=\displaystyle\frac{a_n}{2a_n-3}\)

\(a_n=0\) と仮定すると漸化式
\(a_{n}=\displaystyle\frac{a_{n-1}}{2a_{n-1}-3}\)
より \(a_{n-1}=0\) となるが、これを繰り返すと\(a_1=0\)となり矛盾。よって \(a_n≠0\) だから漸化式の両辺逆数をとると
\(\displaystyle\frac{1}{a_{n+1}}=\displaystyle\frac{2a_n-3}{a_n}\)

\(\displaystyle\frac{1}{a_{n+1}}=-\displaystyle\frac{3}{a_n}+2\)

\(b_n=\displaystyle\frac{1}{a_n}\) とおくと
\(b_{n+1}=-3b_n+2\)
特性方程式 \(x=-3x+2\) を解くと \(x=\displaystyle\frac{1}{2}\) だから
\(b_{n+1}-\displaystyle\frac{1}{2}=-3(b_n-\displaystyle\frac{1}{2})\)
\(b_n-\displaystyle\frac{1}{2}=(-3)^{n-1}(b_1-\displaystyle\frac{1}{2})\)

\(b_1=\displaystyle\frac{1}{1+i}=\displaystyle\frac{1-i}{2}\) より

\(b_n=-\displaystyle\frac{i}{2}(-3)^{n-1}+\displaystyle\frac{1}{2}\)

よって
\(a_n=\displaystyle\frac{2}{-i(-3)^{n-1}+1}\)

ゆえに
\(|a_n-1|=\left|\displaystyle\frac{2}{-i(-3)^{n-1}+1}-1\right|\)

\(=\left|\displaystyle\frac{i(-3)^{n-1}+1}{-i(-3)^{n-1}+1}\right|\)

\(=\displaystyle\frac{\sqrt{(-3)^{2(n-1)}+1}}{\sqrt{(-3)^{2(n-1)}+1}}\)

\(=1\)

したがってすべての\(a_n\)は 円:\(|z-1|=1\) 上にある

 

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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