\((x-1)^2\)のような、\((x-k)^n\)で割ったときの余りを求める問題について見ていきます。
(例題1)
整式\(f(x)\)を \(x-2\), \((x-1)^2\)で割ったときの余りがそれぞれ\(3\),\(x+2\)である。
\(f(x)\)を\((x-1)^2(x-2)\)で割ったときの余りを求めよ。
剰余の定理より、\(f(2)=3\), \(f(1)=1+2=3\) とわかるので、
\(4a+2b+c=3\), \(a+b+c=3\) となりますが、文字3個の式2つなのでこれだけだと\(a,b,c\)は求まりません。
そこで、→余りの決定① でも扱ったように、次の工夫をします。
(1)余りをさらに割る (2)商\(Q(x)\)を割る
また、(3)微分(数Ⅲ) を使っても解くことができます。
(解答1)余りをさらに割る方法
\(f(x)=(x-1)^2(x-2)Q(x)\)\(+ax^2+bx+c\) とおくと
\(f(x)\)を\((x-1)^2\)で割った余りは、\(ax^2+bx+c\)を\((x-1)^2\)で割った余りと等しいので
\(ax^2+bx+c\)\(=a(x-1)^2+x+2\)
と表せる。
よって
\(f(x)=(x-1)^2(x-2)Q(x)\)\(+a(x-1)^2+x+2\)・・・①
また、\(f(x)\)を \(x-2\)で割ったときの余りは\(3\)で剰余の定理より
\(f(2)=3\) だから
\(f(2)=a(2-1)^2+2+2=3\)
したがって、\(a=-1\)
①より求める余りは
\(a(x-1)^2+x+2\)
\(=-(x-1)^2+x+2\)
\(=\)\(-x^2+3x+1\)
(解法2)商\(Q(x)\)を割る方法
\(f(x)\)を \((x-1)^2\)で割ったときの余りがそれぞれ\(x+2\) だから
\(f(x)\)\(=(x-1)^2Q_1(x)+x+2\)・・・②
ここで、\(Q_1(x)\)を\(x-2\)で割ると、余りは定数なので\(k\)とおくと
\(Q_1(x)=(x-2)Q_2(x)+k\)・・・③
③を②に代入して
\(f(x)\)\(=(x-1)^2\{(x-2)Q_2(x)+k\}\)\(+x+2\)
\(=(x-1)^2(x-2)Q_2(x)+k(x-1)^2\)\(+x+2\)・・・④
④は\(k→a\),\(Q_2(x)→Q(x)\) とすれば(解法1)の①と同じなので以下同様。
(解法3)微分(数Ⅲ)を使う方法
\(f(x)=(x-1)^2(x-2)Q(x)\)\(+ax^2+bx+c\)・・・⑤ とおくと
\(f(2)=4a+2b+c\) \(f(1)=a+b+c\)
また条件より
\(f(x)=(x-2)P_1(x)+3\)
\(f(x)=(x-1)^2P_2(x)+x+2\)・・・⑥ なので
\(f(2)=3\), \(f(1)=1+2=3\)
よって \(4a+2b+c=3\)・・・⑦, \(a+b+c=3\)・・・⑧
⑤は \((x-1)^2\) と \((x-2)Q(x)\)の積として微分します。
⑤の両辺を\(x\)で微分すると
\(f'(x)=2(x-1)(x-2)Q(x)\)\(+(x-1)^2\{(x-2)Q(x)\}’\)\(+2ax+b\)
よって \(f'(1)=2a+b\)
⑥の両辺を\(x\)で微分して
\(f'(x)=2(x-1)P_2(x)+(x-1)^2P_2′(x)\)\(+1\)
よって \(f'(1)=1\)
ゆえに \(2a+b=1\)・・・⑨
⑦⑧⑨から\(a,b,c\)を求めると
\(a=-1\), \(b=3\), \(c=1\)
したがって余りは \(-x^2+3x+1\)
(例題2)
(1)\(n\)を2以上の自然数とするとき \(x^n-1\)を \((x-1)^2\)で割った余りを求めよ。
(2)\(n\)を2以上の自然数とするとき \(x^n\)を \((x-2)^2\)で割った余りを求めよ。
他に条件がないので、(1)余りをさらに割る (2)商\(Q(x)\)を割る といった方法は使えなさそうです。(微分の方法では解けます)
そこで次のような方法で解きます。
(1)
(解法1)余り\(ax+b\)の\(a,b\)の一方を消去する方法
\(x^n-1=(x-1)^2Q_1(x)\)\(+ax+b\)・・・①
\(x=1\)を代入すると \(a+b=0\) が導かれます。
次に①に\(b=-a\) を代入し、因数\(x-1\)でくくります。
\(x^n-1\)も因数\(x-1\)をもつので、こちらも因数分解しておきます。
\(x^n-1=(x-1)^2Q_1(x)\)\(+ax+b\)・・・① とおく。
\(x=1\) を代入すると
\(a+b=0\) \(b=-a\)
\(b=-a\)を①に代入して
\(x^n-1=(x-1)^2Q_1(x)\)\(+ax-a\)
\(x^n-1=(x-1)^2Q_1(x)\)\(+a(x-1)\)
\(x^n-1=(x-1)\)\(\{(x-1)Q_1(x)+a\}\)
\(a^n-b^n=(a-b)(a^{n-1}+a^{n-2}b+\)\(・・・\)\(+ab^{n-2}\)\(+b^{n-1})\)
を利用します。(\(a=x\), \(b=1\) とします)
また
\(x^n-1\)
\(=(x-1)\)\((x^{n-1}+x^{n-2}+・・・\)\(+x+1)\) だから
\(x^{n-1}+x^{n-2}+・・・\)\(+x+1\)
\(=(x-1)Q_1(x)+a\)・・・②
\(1+1+・・・+1=n\) です。
②に\(x=1\)を代入して
\(1+1+・・・+1=a\)
よって、\(n=a\)
\(b=-a\)より \(b=-n\)
したがって余りは \(nx-n\)
(解法2)\(x^n\)を\((x-k)\)で二項展開する方法
このうち\((x-1)^2\) で割り切れない項が余りとなるので、\((x-1)\)の1次以下の項のみを考えます。
\(x^n-1=\{(x-1)+1\}^n-1\)
\(x^n-1\) を\((x-1)^2\) で割った余りは、右辺を\((x-1)\)の整式で表すとき、\((x-1)\)についての1次以下の項なので、二項展開により余りは
\({}_n\mathrm C_1(x-1)^1+1^n-1\)
\(=n(x-1)\)
余りは \(nx-n\)
(解法3)微分を用いる方法
\(x^n-1=(x-1)^2Q_1(x)\)\(+ax+b\) ・・・(ア)
\(x=1\) を代入して
\(0=a+b\)・・・(A)
(ア)の両辺を\(x\)で微分して
\(nx^{n-1}=2(x-1)Q_1(x)\)\(+(x-1)^2Q_1′(x)+a\)
\(x=1\)を代入して
\(n=a\)・・・(B)
(A)(B)より \(b=-n\)
以上より余りは \(nx-n\)
(2)
(解法2,3)の解法は(1)とほぼ同じなので割愛します。
(解法1)余り\(ax+b\)の\(a,b\)の一方を消去する方法
\(x^n\)\(=(x-2)^2Q_2(x)\)\(+ax+b\)・・・(イ) とおく。
\(x=2\)を代入して
\(2^n=2a+b\)・・・(X)
(X)より \(b=2^n-2a\) を(イ)に代入して
\(x^n\)\(=(x-2)^2Q_2(x)\)\(+ax+2^n-2a\)
\(x^n-2^n\)\(=(x-2)^2Q_2(x)\)\(+a(x-2)\)
\(x^n-2^n\)\(=(x-2)\)\(\{(x-2)Q_2(x)+a\}\)
\(a^n-b^n=(a-b)(a^{n-1}+a^{n-2}b+\)\(・・・\)\(+ab^{n-2}\)\(+b^{n-1})\)
を利用します。
また
\(x^n-2^n\)
\(=(x-2)\)\((x^{n-1}+2x^{n-2}\)\(+・・・\)\(+2^{n-2}x\)\(+2^{n-1})\)
よって
\(x^{n-1}+2x^{n-2}\)\(+・・・\)\(+2^{n-2}x\)\(+2^{n-1}\)
\(=(x-2)Q_2(x)+a\)・・・(ウ)
項は\(n\)個あるので (左辺)=\(n・2^{n-1}\)です。
(ウ)に\(x=2\) を代入すると
\(2^{n-1}+2^{n-1}+・・・+2^{n-1}+2^{n-1}\)\(=a\)
よって \(a=n・2^{n-1}\)
\(b=2^n-2a\)より
\(b=2^n-2・n・2^{n-1}\)
\(=2^n-n・2^n\)
\(=2^n(1-n)\)
以上より余りは \(n・2^{n-1}x+2^n(1-n)\)
二項展開・微分を利用する(解法2,3)は(1)と同様のため割愛
以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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