2次方程式と同様に、3次方程式の解と係数の関係について見ていきます。
・3次方程式の解と係数の関係
3次方程式 \(ax^3+bx^2+cx+d=0\) について、その解を \(α,β,γ\)とすると、3次の係数が\(a\)であることから、左辺は次のように因数分解できます。
\(ax^3+bx^2+cx+d\)\(=a(x-α)(x-β)(x-γ)\)
右辺を展開すると
\(ax^3+bx^2+cx+d\)
\(=ax^3-a(α+β+γ)x^2+a(αβ+βγ+γα)x\)\(-aαβγ\)
これは\(x\)の恒等式なので係数を比較すると
\(α+β+γ=-\displaystyle\frac{b}{a}\)
\(αβ+βγ+γα=\displaystyle\frac{c}{a}\)
\(αβγ=-\displaystyle\frac{d}{a}\)
が成り立ちます。(3次方程式の解と係数の関係)
なお、\(α+β+γ\), \(αβ+βγ+γα\), \(αβγ\) は3文字における基本対称式となります。
3次方程式 \(ax^3+bx^2+cx+d=0\) の解を \(α,β,γ\)とすると
\(α+β+γ=-\displaystyle\frac{b}{a}\)
\(αβ+βγ+γα=\displaystyle\frac{c}{a}\)
\(αβγ=-\displaystyle\frac{d}{a}\)
例えば\(αx^2(βx^2,γx^2)\)の項はマイナスがつくので、\(α+β+γ\)の式にはマイナスがつきます。(2番目の式は\(αβx\),3番目の式は\(αβγ\)につく符号を考えればわかります)
また、\(a\)で割るのも忘れずに。
同様に、4次方程式 \(ax^4+bx^3+cx^2+dx+e=0\) の解を \(α,β,γ,δ\)とすると
\(ax^4+bx^3+cx^2+dx+e\)\(=a(x-α)(x-β)(x-γ)(x-δ)\)
と因数分解できて、右辺を展開して両辺の係数を比較すると、4次方程式の解と係数の関係が得られます。
なお一般に、\(n\)次方程式
\(a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+・・・+a_1x+a_0=0\)
の解を、\(α_1,α_2・・・,α_n\)とすると
\(a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+・・・+a_1x+a_0\)
\(=a_n(x-α_1)(x-α_2)・・・(x-α_n)\)
と因数分解できます。
・3次方程式の作成
\(α,β,γ\)を解とする3次方程式は
\(a(x-α)(x-β)(x-γ)=0\)・・・①
であり、とくに\(x^3\)の係数が\(1\)のときを考えるとそれは\(a=1\)のときで、①は
\(x^3-(α+β+γ)x^2+(αβ+βγ+γα)x-αβγ=0\)・・・②
となるので、3解の和\((α+β+γ)\), 2解の積の和\((αβ+βγ+γα)\), 3解の積\((αβγ)\) を計算すれば、\(α,β,γ\)を解とする3次方程式を作成することができます。
また\(x^3\)の係数が\(1\)のものは②となりますが、①より\(a\)の値の数だけ3次方程式が存在するので、\(α,β,γ\)を解とする3次方程式は無数にあります。
(例題1)
\(x^3-8x-2=0\) の3解を\(α,β,γ\)とするとき次の式の値を求めよ。
\(\displaystyle\frac{3}{\displaystyle\frac{1}{1+α}+\displaystyle\frac{1}{1+β}+\displaystyle\frac{1}{1+γ}}\)
(解答)
解と係数の関係から
\(α+β+γ=0\)
\(αβ+βγ+γα=-8\)
\(αβγ=-(-2)=2\)
値を求める式の分母は
\(\displaystyle\frac{1}{1+α}+\displaystyle\frac{1}{1+β}+\displaystyle\frac{1}{1+γ}\)
\(=\displaystyle\frac{(1+β)(1+γ)+(1+α)(1+γ)+(1+α)(1+β)}{(1+α)(1+β)(1+γ)}\)
\(=\displaystyle\frac{3+2(α+β+γ)+(αβ+βγ+γα)}{1+(α+β+γ)+(αβ+βγ+γα)+αβγ}\)
\(=\displaystyle\frac{3-8}{1-8+2}\)
\(=1\)
よって式の値は
\(\displaystyle\frac{3}{1}=\)\(3\)
(例題2)
3次方程式 \(x^3-3x^2+2x+1=0\) の3つの解を \(α,β,γ\)とするとき、
\(α+β\), \(β+γ\), \(γ+α\) を解とする3次方程式を1つ求めよ。
\(α+β\), \(β+γ\), \(γ+α\) を解とする3次方程式を作るには
①3解の和:\((α+β)+(β+γ)\)\(+(γ+α)\)
②2解の積の和:\((α+β)(β+γ)\)\(+(β+γ)(γ+α)\)\(+(γ+α)(α+β)\)
③3解の積:\((α+β)(β+γ)\)\((γ+α)\)
を求めればよいです。解と係数の関係から①~③を求めるわけですが、②③はそのまま展開して計算すると大変なので少し工夫をします。
(解答)
\(α,β,γ\)について、解と係数の関係から
\(α+β+γ=-(-3)=3\)
\(αβ+βγ+γα=2\)
\(αβγ=-1\)
\((α+β)+(β+γ)\)\(+(γ+α)\)
\(=2(α+β+γ)\)
\(=\)\(6\)
ここで \(α+β+γ=3\)より
\(α+β=3-γ\), \(β+γ=3-α\), \(γ+α=3-β\) なので
\((α+β)(β+γ)\)\(+(β+γ)(γ+α)\)\(+(γ+α)(α+β)\)
\(=(3-γ)(3-α)\)\(+(3-α)(3-β)\)\(+(3-β)(3-γ)\) (より簡単な式になった)
\(=27-6(α+β+γ)+(αβ+βγ+γα)\)
\(=27-6・3+2\)
\(=\)\(11\)
同様に
\((α+β)(β+γ)\)\((γ+α)\)
\(=(3-γ)(3-α)(3-β)\)
\(=27-9(α+β+γ)+3(αβ+βγ+γα)\)\(-αβγ\)
\(=27-9・3+3・2+1\)
\(=7\)
したがって \(α+β\), \(β+γ\), \(γ+α\) を解とする3次方程式の1つは
\(x^3-6x^2+11x-7=0\)
なお解答では3次の係数を\(1\)にしましたが、例えば両辺を\(2\)倍した式
\(2x^3-12x^2+22x-14=0\) なども正解の1つです。
(例題3)
3つの実数 \(x,y,z\) が
\(x+y+z=3\), \(x^2+y^2+z^2=9\), \(x^3+y^3+z^3=21\),
\(x≧y≧z\) を満たすとき
(1)\(xyz\)の値を求めよ。
(2)\(x,y,z\)の値を求めよ。
(解答)
(1)
(解答)
\((x+y+z)^2=x^2+y^2+z^2\)\(+2(xy+yz+zx)\) より
\(3^2=9+2(xy+yz+zx)\)
よって \(xy+yz+zx=0\)
ここで、\(xyz=k\) とおくと \(x+y+z=3\) より
\(x,y,z\)を解とする3次方程式の1つは
\(t^3-3t^2-k=0\)・・・①
①に\(t=x,y,z\)を代入すると成り立つので
\(x^3-3x^2-k=0\)・・・②
\(y^3-3y^2-k=0\)・・・③
\(z^3-3z^2-k=0\)・・・④
②+③+④より
\(x^3+y^3+z^3-3(x^2+y^2+z^2)\)\(-3k=0\)・・・⑤
よって
\(3k=21-3・9\)
\(k=\)\(xyz=-2\)
\(x^3+y^3+z^3\)\(=3(x^2+y^2+z^2)\)\(+3k\) であり、
\(x^3+y^3+z^3\)を\(x^2+y^2+z^2\)や\(x+y+z\)(本問では無い)などを用いて表した式となります。
(別解)
\(xy+yz+zx=0\) を導くまでは同じ。
ここで因数分解公式
\(x^3+y^3+z^3-3xyz\)
\(=(x+y+z)(x^2+y^2+z^2-xy-yz-zx)\)
より
\(21-3xyz=3・(9-0)\)
よって
\(xyz=-2\)
(2)
あとは\(x,y,z\)を解とする3次方程式を作って解くだけですが、それは既に(1)で作った式①です。\(t^3-3t^2-k=0\)・・・①
(1)の①より\(x,y,z\)を3解とする3次方程式は
\(t^3-3t^2+2=0\)
これを解くと
\((t-1)(t^2-2t-2)=0\) より
\(t=1,1±\sqrt{3}\)
\(x≧y≧z\) だから
\(x=1+\sqrt{3}\), \(y=1\), \(z=1-\sqrt{3}\)
以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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