ある点を基準としたベクトル(始点を固定したベクトル)について学んでいきます。
・位置ベクトル
平面上で定点\(O\)をとると、平面上の任意の点の位置は\(O\)を基準(始点)としたベクトルを用いて表すことできます。つまり平面上の点\(P\)の位置は
\(\overrightarrow{OP}=\vec{p}\)
によって定まることになります。このとき\(\vec{p}\)を\(O\)を基準とする点\(P\)の位置ベクトルといい、位置ベクトルが\(\vec{p}\)である点\(P\)を \(P(\vec{p})\) と表します。
基準となる点\(O\)のとりかたに決まりはありませんが、特に\(O\)を座標平面上の原点にとると、\(\vec{p}\)の成分と点\(P\)の座標が一致するので、原点を基準とすることが多いです。
また、2点 \(A(\vec{a})\), \(B(\vec{b})\) について
\(\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{OB}-\overrightarrow{OA}=\vec{b}-\vec{a}\)
となるので、\(\overrightarrow{AB}\) は終点\(B\)の位置ベクトルから始点\(A\)の位置ベクトルを引いた差で表されることになります。
・分点の位置ベクトル
(内分点の位置ベクトル)
2点 \(A(\vec{a})\), \(B(\vec{b})\) を結ぶ線分\(AB\)を\(m:n\) の比に内分する点を\(P(\vec{p})\) とすると
\(\vec{p}=\overrightarrow{OP}=\overrightarrow{OA}+\overrightarrow{AP}\)
\(=\overrightarrow{OA}+\displaystyle\frac{m}{m+n}\overrightarrow{AB}\)
\(=\vec{a}+\displaystyle\frac{m}{m+n}(\vec{b}-\vec{a})\)
\(=\displaystyle\frac{n\vec{a}+m\vec{b}}{m+n}\)
とくに線分\(AB\)の中点の位置ベクトルは \(m=n\) として
\(\vec{p}=\displaystyle\frac{\vec{a}+\vec{b}}{2}\)
(外分点の位置ベクトル)
2点 \(A(\vec{a})\), \(B(\vec{b})\) を結ぶ線分\(AB\)を\(m:n\) の比に外分する点を\(Q(\vec{q})\) とすると
①\(m>n\)のとき
線分\(AB\)の\(B\)の延長先に\(Q\)があり、図より
\(\vec{q}=\overrightarrow{OQ}=\overrightarrow{OA}+\overrightarrow{AQ}\)
\(=\overrightarrow{OA}+\displaystyle\frac{m}{m-n}\overrightarrow{AB}\)
\(=\vec{a}+\displaystyle\frac{m}{m-n}(\vec{b}-\vec{a})\)
\(=\displaystyle\frac{-n\vec{a}+m\vec{b}}{m-n}\)
②\(m<n\)のとき
線分\(AB\)の\(A\)の延長先に\(Q\)があり、図より
\(\vec{q}=\overrightarrow{OA}+\overrightarrow{AQ}\)
\(=\overrightarrow{OA}+\displaystyle\frac{m}{n-m}\overrightarrow{BA}\)
\(=\overrightarrow{OA}+\displaystyle\frac{m}{m-n}\overrightarrow{AB}\)
(結局①と同様になり)
\(=\displaystyle\frac{-n\vec{a}+m\vec{b}}{m-n}\)
したがって\(m,n\)の大小に関係せず
\(\vec{q}=\displaystyle\frac{-n\vec{a}+m\vec{b}}{m-n}\)
以上の内容は基準\(O\)を変えても変わらないので、基準の取り方によらず成り立ちます。
・重心の位置ベクトル
内分点の位置ベクトルを利用すると、三角形の重心の位置ベクトルを求めることができます。
\(△ABC\)の頂点を \(A(\vec{a})\), \(B(\vec{b})\) \(C(\vec{c})\) とおくと、線分\(BC\)の中点\(F(\vec{f})\)について
\(\vec{f}=\displaystyle\frac{\vec{b}+\vec{c}}{2}\)
重心\(G(\vec{g})\)は線分\(AF\)を\(2:1\)に内分する点なので
\(\vec{g}=\displaystyle\frac{1\cdot\vec{a}+2\cdot\vec{f}}{2+1}\)
\(=\displaystyle\frac{\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}}{3}\)
(こちらも基準\(O\)の取り方によらず成り立つ)
(例題)
図のような四角形\(ABCD\)において、対角線\(AC\)の中点を\(M\)とする。また、線分\(BM\)を\(3:2\)に内分する点を\(E\)とし、線分\(DB\)を\(4:3\)に内分する点を\(F\)とする。点\(A,B,C,D\)の位置ベクトルをそれぞれ \(\vec{a},\vec{b},\vec{c},\vec{d}\) としたとき、\(\overrightarrow{EF}\) を \(\vec{a},\vec{b},\vec{c},\vec{d}\) で表せ。
(解答)
\(M(\vec{m}\), \(E(\vec{e})\), \(F(\vec{f})\) とおく。
\(\vec{m}=\displaystyle\frac{\vec{a}+\vec{c}}{2}\) だから
\(\vec{e}=\displaystyle\frac{2\vec{b}+3\vec{m}}{3+2}=\displaystyle\frac{2\vec{b}+\displaystyle\frac{3(\vec{a}+\vec{c})}{2}}{5}=\displaystyle\frac{3\vec{a}+4\vec{b}+3\vec{c}}{10}\)
また
\(\vec{f}=\displaystyle\frac{3\vec{d}+4\vec{b}}{4+3}=\displaystyle\frac{4\vec{b}+3\vec{d}}{7}\)
したがって
\(\overrightarrow{EF}=\vec{f}-\vec{e}\)
\(=\displaystyle\frac{4\vec{b}+3\vec{d}}{7}-\displaystyle\frac{3\vec{a}+4\vec{b}+3\vec{c}}{10}\)
\(=-\displaystyle\frac{3}{10}\vec{a}+\displaystyle\frac{6}{35}\vec{b}-\displaystyle\frac{3}{10}\vec{c}+\displaystyle\frac{3}{7}\vec{d}\)
以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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