漸化式と極限③(不等式の利用)

不等式を利用する(はさみうちの原理)を利用する、漸化式と極限の例題です。

解けない漸化式の数列の極限は、はさみうちの原理などで間接的に求めていきます。

 

 

(例題1)
\(a\)を正の定数とする。\(f(x)=x^2-a\) として、関数\(y=f(x)\)のグラフ上の点\((x_n,f(x_n))\)における接線が\(x\)軸と交わる点の\(x\)座標を\(x_{n+1}\)とする。このようにして、\(x_{1}\)から順に\(x_2,x_3,x_4,\cdots\)を作る。ただし、\(x_1>\sqrt{a}\)とする。

(1)\(x_{n+1}\)を\(x_n\)を用いて表せ。
(2)\(\sqrt{a}<x_{n+1}<x_n\) であることを示せ。
(3)\(|x_{n+1}-\sqrt{a}|<\displaystyle\frac{1}{2}|x_{n}-\sqrt{a}|\) であることを示せ。
(4)\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}x_n\) を求めよ。

 

(解答)
(1)

微分を用いて接線の方程式を立てて解きます。

漸化式 不等式 例題

\(y=f(x)=x^2-a\)

\((x_n,x_n^2-a)\) における接線の方程式は、\(f'(x)=2x\) より
\(y=2x_n(x-x_n)+x_n^2-a\)

この接線の\(x\)切片が\(x_{n+1}\)だから
\(0=2x_n(x_{n+1}-x_n)+x_n^2-a\)
よって
\(2x_nx_{n+1}=x_n^2+a\)・・・①

ここで、\(x_n=0\) とすると ①は \(0=a\) となるが、\(a\)は正の定数だから不適。
ゆえに\(x_n≠0\)だから①の両辺を\(2x_n\)で割って

\(x_{n+1}=\displaystyle\frac{1}{2}x_n+\displaystyle\frac{a}{2x_n}\)

 

(2)

\(\sqrt{a}<x_{n+1}\) と \(x_{n+1}<x_n\) に分けます。(1つ目の不等式は、\(\sqrt{a}<x_n\) として証明します。こうすると\(n=2,3,\cdots\)になりますが、大は小を兼ねるの考えで\(n=1,2,\cdots\)で示していきます。)
不等式の証明の基本は、各辺の差をとることですが、\(\sqrt{a}<x_n\) のほうは\(n\)が自然数であることと、漸化式が手に入っていることから帰納法で示していきます。

(ア)まず \(\sqrt{a}<x_{n}\) を数学的帰納法により示す。

(i)\(n=1\) のとき
条件から \(x_1>\sqrt{a}\) だから成立

(ii)\(n=k\) のとき (\(k=1,2,\cdots\))
\(\sqrt{a}<x_{k}\) が成り立つと仮定する。

このとき漸化式より
\(x_{k+1}-\sqrt{a}\)

\(=\displaystyle\frac{1}{2}x_k+\displaystyle\frac{a}{2x_k}-\sqrt{a}\)

\(=\displaystyle\frac{x_k^2+a-2\sqrt{a}x_k}{2x_{k}}\)

\(=\displaystyle\frac{(x_k-\sqrt{a})^2}{2x_{k}}>0\)

したがって \(\sqrt{a}<x_{k+1}\) であり、\(n=k+1\)でも成立する。

(i)(ii)より、任意の自然数\(n\)で \(\sqrt{a}<x_n\)

 

(イ)次に、\(x_{n+1}<x_n\) を示す。
\(x_{n}-x_{n+1}\)
\(=x_{n}-(\displaystyle\frac{1}{2}x_n+\displaystyle\frac{a}{2x_n})\)

\(=\displaystyle\frac{x_n^2-a}{2x_{n}}>0\) (∵(ア)より \(x_n^2>a\) )

よって \(x_{n+1}<x_n\)

(ア)(イ)より
\(\sqrt{a}<x_{n+1}<x_n\)

 

(3)

\(|x_{n+1}-\sqrt{a}|\) を漸化式を用いて\(x_n\)のみの式にして変形していきます。途中の式変形が難しいかもしれませんが、最終的に右辺の形、特に係数が\(\displaystyle\frac{1}{2}\)となることが目標であることを意識します。
なおこの例題だと絶対値はあっても無くても変わりませんが、正負どちらにも対応できるように絶対値をつけることが多いです。

\(|x_{n+1}-\sqrt{a}|\)

\(=|\displaystyle\frac{1}{2}x_n+\displaystyle\frac{a}{2x_n}-\sqrt{a}|\)

\(=\left|\displaystyle\frac{(x_n-\sqrt{a})^2}{2x_{n}}\right|\)

\(=\left|\displaystyle\frac{x_n-\sqrt{a}}{2x_n}\right||x_n-\sqrt{a}|\)

\(=\displaystyle\frac{1}{2}\left|(1-\displaystyle\frac{\sqrt{a}}{x_n})\right||x_n-\sqrt{a}|\)

ここで(2)より \(x_n>\sqrt{a}\ (>0)\) だから
\(0<\displaystyle\frac{\sqrt{a}}{x_n}<1\)
よって
\(\left|(1-\displaystyle\frac{\sqrt{a}}{x_n})\right|<1\)
となるから

\(|x_{n+1}-\sqrt{a}|<\displaystyle\frac{1}{2}|x_n-\sqrt{a}|\)

 

(4)

通常の等比型の漸化式 \(a_{n}=2a_{n-1}\) の一般項を求める際に、1つずつ項の番号を下げる方法で求めると
\(a_n=2a_{n-1}=2^2a_{n-2}=2^3a_{n-3}=\cdots=2^{n-1}a_1\)
となります。これと同じことを不等式でもやります。(3)の不等式は両辺で1つずれた形になっているのでこの方法が使えます。

(3)より
\(|x_{n}-\sqrt{a}|<\displaystyle\frac{1}{2}|x_{n-1}-\sqrt{a}|\)

\(<\displaystyle\frac{1}{2^{2}}|x_{n-2}-\sqrt{a}|\)

\(<\displaystyle\frac{1}{2^{3}}|x_{n-3}-\sqrt{a}|\)

\(\cdots<\displaystyle\frac{1}{2^{n-1}}|x_1-\sqrt{a}|\)

よって
\(0<|x_n-\sqrt{a}|<\displaystyle\frac{1}{2^{n-1}}|x_1-\sqrt{a}|\)

累乗の部分(もとの不等式の右辺の係数)が\(1\)より小さいので、\(n\)を無限大にとばすと、右辺は\(0\)に収束します。

ここで、(\(x_1\)は有限な値だから)
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{1}{2^{n-1}}|x_1-\sqrt{a}|=0\) であり、はさみうちの原理より

\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}|x_n-\sqrt{a}|=0\)

したがって
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}x_n=\sqrt{a}\)

 

この例題はニュートン法という\(\sqrt{a}\)の近似値を求める方法が題材になっています。詳しくは、→漸化式と不等式(数ⅡB) を参照して下さい。扱っている例題は同じものです。

 

 

 

 

 

(例題2)
数列\(\{a_n\}\)を
\(a_1=1\),  \(a_{n+1}=\sqrt{\displaystyle\frac{3a_n+4}{2a_n+3}}\)  (\(n=1,2,3,\cdots\))
で定める。

(1)\(n≧2\) のとき、\(a_n>1\) となることを示せ。
(2)\(α^2=\displaystyle\frac{3α+4}{2α+3}\) を満たす正の実数\(α\)を求めよ。
(3)すべての自然数\(n\)に対して \(a_n<α\) となることを示せ。
(4)\(0<r<1\) を満たすある実数\(r\)に対して、不等式 \(\displaystyle\frac{α-a_{n+1}}{α-a_n}≦r\)  (\(n=1,2,3,\cdots\)) が成り立つことを示せ。さらに、極限 \(\displaystyle\lim_{n \to \infty}a_n\) を求めよ。

 

 

漸化式と相性のいい数学的帰納法などを利用していきます。

(1)

帰納法でも示せますが、漸化式の根号の中身の分数について、分子のほうが大きいので\(1\)より大きいのは明らかです。

\(a_{n+1}=\sqrt{\displaystyle\frac{3a_n+4}{2a_n+3}}=\sqrt{\displaystyle\frac{2a_n+3+a_n+1}{2a_n+3}}\)

\(=\sqrt{1+\displaystyle\frac{a_n+1}{2a_n+3}}\)・・・①

また \(a_1=1\) と漸化式より \(a_n>0\) がいえるので、①より
\(a_{n+1}>1\) (\(n=1,2,3,\cdots\))

したがって \(n≧2\) のとき、\(a_n>1\) となる。

(2)
(方程式を解くだけです)
\(α^2=\displaystyle\frac{3α+4}{2α+3}\) より (\(α>0\)より分母は正)

\(α^2(2α+3)=3α+4\)
\(2α^3+3α^2-3α-4=0\)
\((α+1)(2α^2+α-4)=0\)

\(α>0\) より
\(α=\displaystyle\frac{-1+\sqrt{33}}{4}\)

(3)

漸化式を利用して、帰納法で示します。

すべての自然数で \(a_n<α\) が成り立つことを数学的帰納法で示す。

(i)\(n=1\) のとき
\(a_1=1\)
\(α=\displaystyle\frac{-1+\sqrt{33}}{4}>\displaystyle\frac{-1+\sqrt{25}}{4}=1\) だから

\(a_1<α\) は成立。

(ii)\(n=k\) のとき (\(k=1,2,3,\cdots\))
\(a_k<α\) が成立すると仮定する。

漸化式がルートの形になっているので、2乗した式で考えていきます。

このとき
\(α^2-a_{k+1}^2\)

\(=\displaystyle\frac{3α+4}{2α+3}-\displaystyle\frac{3a_k+4}{2a_k+3}\)

\(=\displaystyle\frac{α-a_k}{(2α+3)(2a_k+3)}>0\)・・・②

(∵ 仮定 \(a_k<α\) と、\(α>1\), \(a_k≧1\) より )

よって
\(a_{k+1}^2<α^2\) が成り立ち、\(α\)も\(a_{k+1}\)も正の数だから
\(a_{k+1}<α\)
ゆえに\(n=k+1\)でも成立する。

以上より、すべての自然数\(n\)に対して \(a_n<α\)

 

(4)

(3)の(ii)で導いた式が、\(\displaystyle\frac{α-a_{n+1}}{α-a_n}\) に近い形をしているのでこれを利用します。\(r\)は\(0<r<1\)であればなんでもよいので、\(\displaystyle\frac{α-a_{n+1}}{α-a_n}≦r\) が成り立つような\(r\)を適当に選びます。

(3)の②で\(k\)を\(n\)にして

\(α^2-a_{n+1}^2=\displaystyle\frac{α-a_n}{(2α+3)(2a_n+3)}\)・・・③

左辺を因数分解すると\((α-a_{n+1})(α+a_{n+1})\) であり、
③の両辺を\((α-a_n)(α+a_{n+1})\ (≠0)\) で割ると

\(\displaystyle\frac{α-a_{n+1}}{α-a_n}=\displaystyle\frac{1}{(2α+3)(2a_n+3)(α+a_{n+1})}\)

ここで、\(α>1\), \(a_n≧1\), \(a_{n+1}>1\) だから
\((2α+3)(2a_n+3)(α+a_{n+1})>5\cdot5\cdot2=50\)

よって
\(\displaystyle\frac{α-a_{n+1}}{α-a_n}≦\displaystyle\frac{1}{50}\)・・・(注)
となるので、\(r=\displaystyle\frac{1}{50}\) とすれば
\(\displaystyle\frac{α-a_{n+1}}{α-a_n}≦r\)・・・④
が成り立つ。

(注について)
イコールつきの不等号は、\(<\) と \(=\) のどちらか一方のみが成り立っていればよいので、\(≦\) としても問題ありません。

さらに④より、\(a_n<α\) だから (分母を払っても不等号の向きは変わらず)
\(α-a_{n+1}≦r(α-a_n)\) (1個ずれた形)

この不等式を繰り返し使うことで
\(0<α-a_n≦r^{n-1}(α-a_1)\)
が成り立つことになる。

\(0<r<1\) より
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}r^{n-1}(α-a_1)=0\)
だから、はさみうちの原理より

\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}(α-a_n)=0\)

したがって
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}a_n=α=\displaystyle\frac{-1+\sqrt{33}}{4}\)

 

(参考)
\(a_{n+1}=f(a_n)\) 型の漸化式で一般的にいえることですが、\(y=f(x)\) と \(y=x\) のグラフを描くことにより、極限を予想することができます。
(例題2)では、\(a_{n+1}=\sqrt{\displaystyle\frac{3a_n+4}{2a_n+3}}\) なので、

\(f(x)=\sqrt{\displaystyle\frac{3x+4}{2x+3}}\)

とおくと、前の項を\(x\)座標とすると次の項が\(y=f(x)\)の\(y\)座標になるので、\(y=x\)上の点は\(x,y\)座標が等しいから、項を次々に求める作業は座標平面上での階段状の動きに対応します。すると、\(a_n\)は2つのグラフの交点の\(x(y)\)座標に向かうことが予想できます。(例題2)ではこの交点の\(x\)座標を(2)で求めています。

漸化式極限③ 例題2

(かなり早い段階で交点に近づいています)

 

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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