十分大きいnと数列の収束

数列の極限のやや発展的な内容です。(無限級数とはあまり関係ないかもしれませんが、今回扱います)

\(ε-N\)論法(高校数学範囲外)にかなり近い内容になっています。

 

 

(例題1)
\(α\)は \(0<α<1\) を満たす実数とする。任意の自然数\(n\)に対して、\(2^{n-1}α\) の整数部分を\(a_n\)とし、\(2^{n-1}α=a_n+b_n\) とおくと、
\(n\)が奇数のとき \(0≦b_n<\displaystyle\frac{1}{2}\)、\(n\)が偶数のとき \(\displaystyle\frac{1}{2}<b_n<1\)
になるという。\(a_n\) および \(α\) を求めよ。

 

\(b_n\)の条件が、偶奇で変わるので \(n=2k-1,\ 2k\) として処理していきます。

(解答)
\(n=2k-1,\ 2k\) として

\(2^{2k-2}α=a_{2k-1}+b_{2k-1}\)・・・①
\(2^{2k-1}α=a_{2k}+b_{2k}\)・・・②

\(α\)を消去することで、\(a_{n},b_{n}\)の漸化式を作ります。

①×2-② より\(α\)を消去して
\(a_{2k}+b_{2k}=2a_{2k-1}+2b_{2k-1}\)

\(a_n\)は整数で、条件より \(\displaystyle\frac{1}{2}<b_{2k}<1\)、\(0≦2b_{2k-1}<1\) となるから、\(b_{2k},2b_{2k-1}\) は小数部分になります。よって\(b_{2k}=2b_{2k-1}\) が成り立ちます。(\(a_{2k}=2a_{2k-1}\) も成り立ちますが、\(a_n\)の条件がほとんどないのであまり有用ではないです)

\(a_{2k}, \ 2a_{2k-1}\)は整数で、\(\displaystyle\frac{1}{2}<b_{2k}<1\)、\(0≦2b_{2k-1}<1\) となるから、
\(b_{2k}=2b_{2k-1}\)・・・③

③は一応隣接している項の漸化式にはなっていますが、1つずれた形にはなっていないので解けません。よってもう1つ漸化式(\(2k,2k+1\)の関係式)を作ります。

同様に、\(n=2k,2k+1\) として
\(2^{2k-1}α=a_{2k}+b_{2k}\)・・・②
\(2^{2k}α=a_{2k+1}+b_{2k+1}\)・・・④

②×2-④より
\(a_{2k+1}+b_{2k+1}=2a_{2k}+2b_{2k}\)

\(a_{2k}, \ 2a_{2k-1}\)は整数で、\(0≦b_{2k+1}<\displaystyle\frac{1}{2}\)、\(1<2b_{2k}<2\) となるから、(小数部分が同じで、1だけずれている)
\(b_{2k+1}=2b_{2k}-1\)・・・⑤

⑤に③を代入して
\(b_{2k+1}=2\cdot2b_{2k-1}-1\)
\(b_{2k+1}=4b_{2k-1}-1\)・・・⑥

特性方程式
\(x=4x-1\) の解は \(x=\displaystyle\frac{1}{3}\) だから⑥は次のように変形できる。
\(b_{2k+1}-\displaystyle\frac{1}{3}=4(b_{2k-1}-\displaystyle\frac{1}{3})\)

よって
\(b_{2k-1}-\displaystyle\frac{1}{3}=4^{k-1}(b_1-\displaystyle\frac{1}{3})\)

\(α=a_1+b_1\) より、\(b_1=α\) だから
\(b_{2k-1}=4^{k-1}(α-\displaystyle\frac{1}{3})+\displaystyle\frac{1}{3}\)

この式から\(α\)の値が分かります。
\(4^{k-1}\)は\(k\)を大きくすればいくらでも大きくなるので、もし\(α≠\displaystyle\frac{1}{3}\) だと\(b_{2k-1}\)が\(1\)を超えてしまうか負の値になってしまいます。よって\(α=\displaystyle\frac{1}{3}\)です。すると\(b_n\)も分かり、\(a_n\)も分かります。

ここで、\(α≠\displaystyle\frac{1}{3}\) と仮定すると
\(k\)を十分大きくとると、\(0≦b_{2k-1}<\displaystyle\frac{1}{2}\) を満たさない。

ゆえに \(α=\displaystyle\frac{1}{3}\)

したがって \(b_{2k-1}=\displaystyle\frac{1}{3}\)
これと③より
\(b_{2k}=\displaystyle\frac{2}{3}\)

\(2^{n-1}α=a_n+b_n\) より

\(n\)が奇数のとき
\(a_n=\displaystyle\frac{1}{3}\cdot2^{n-1}-\displaystyle\frac{1}{3}\)

\(n\)が偶数のとき
\(a_n=\displaystyle\frac{1}{3}\cdot2^{n-1}-\displaystyle\frac{2}{3}\)

 

 

 

(例題2)
数列\(\{a_n\}\)が
\(a_k<a_{k+1}\)  (\(k=1,2,\cdots\))、\(a_2=1\)
および
\(a_{kl}=a_k+a_l\) (\(k=1,2,\cdots\)、 \(l=1,2,\cdots\))
を満たすとする。

(1)\(k\)を\(2\)以上の自然数とする。自然数\(n\)が与えられたとき
\(2^{m-1}≦k^n<2^{m}\)
を満たす自然数\(m\)が存在することを示せ。
(2)\(k,n\)を自然数とするとき、\(a_{k^n}=na_k\) であることを示せ。
(3)\(k,n\)を自然数とするとき、不等式
\(-1<n(a_k-\log_2k)<1\)
が成り立つことを示せ。
(4)数列\(\{a_n\}\)の一般項を求めよ。

 

 

少しだけ条件について整理すると、数列\(\{a_n\}\)は単調増加。また漸化式のほうは、具体的に考えると \(a_{3×5}(=a_{15})=a_3+a_5\) です。(添え字の積の項と、項の和が等しい)

(解答)
(1)

\(k,n\)を具体的にしてみると
\(2^{m-1}≦3^4<2^{m}\)
つまり、\(2^{m-1}≦81<2^{m}\) を満たす\(m\)が存在するということですが、ほとんど自明です(この例だと\(m=7\))。何故かというと、\(m=1,2,\cdots\) と代入していくと、\(1≦k^n<2\)、\(2≦k^n<4\)、\(4≦k^n<8\)・・・と自然数全体をカバーできるからです。

区間 \(2^{m-1}≦x<2^{m}\) を\(I_m\)とすると、\(1\)以上の実数全体は\(I_1,I_2,I_3,\cdots\) に分割される。よって \(k^n \in I_m\) を満たす\(m\)が存在するので、
\(2^{m-1}≦k^n<2^{m}\)
を満たす自然数\(m\)が存在する。

(2)

\(a_{k^n}=a_{(k \cdot k \cdot k \cdots k)\cdot k}\) なので、漸化式から
\(a_{k^n}=a_{k^{n-1}}+a_k\)
これを繰り返すと目的の等式が得られます。丁寧にやるなら帰納法が良いと思います。

\(a_{k^n}=na_k\) を\(n\)に関する帰納法で示す。

(i)\(n=1\)のとき
\(a_{k^1}=1\cdot a_k\) は成り立つ。

(ii)\(n=p\)のとき、(\(p=1,2,\cdots\))
\(a_{k^p}=pa_k\) が成り立つと仮定する。

漸化式から
\(a_{k^{p+1}}=a_{k^p}+a_k\)
\(=pa_k+a_k\)
\(=(p+1)a_k\)

よって\(n=p+1\)のときも成立する。

以上より \(a_{k^n}=na_k\) は任意の自然数\(n,k\)で成り立つ。

 

(3)

(1)(2)を利用します。
\(2^{m-1}≦k^n<2^{m}\)・・・① から目標の不等式に近づけるために対数をとると
\(m-1≦n\log_{2}k<m\)
余計な\(m\)が残っているのでもう1つ\(m\)に関する不等式を立てますが、まだ使っていない単調増加性と\(a_2=1\)を用いると、①の辺々を数列の添え字にして
\(a_{2^{m-1}}≦a_{k^n}<a_{2^{m}}\)
すると(2)より
\((m-1)a_2≦na_{k}<ma_2\)
が導かれるので、あとは\(m\)を消去するだけです。

(1)は\(k=1\)でも成り立つので、任意の自然数\(k,n\)について
\(2^{m-1}≦k^n<2^{m}\)・・・①
が成り立つ\(m\)が存在する。

与えられた条件から、数列は単調増加となるから
\(a_{2^{m-1}}≦a_{k^n}<a_{2^{m}}\)
(2)より
\((m-1)a_2≦na_{k}<ma_2\)
\(a_2=1\) だから
\(m-1≦na_{k}<m\)・・・②

また①の辺々について底を\(2\)とする対数をとって
\(m-1≦n\log_{2}k<m\)
よって
\(-m<-n\log_{2}k≦-m+1\)・・・③

したがって②+③から
\(-1<n(a_{k}-\log_{2}k)<1\)
が成り立つ。

 

(4)

(3)より
\(|n(a_k-\log_{2}k)|<1\) となり、\(n\)は自然数なので
\(|a_k-\log_{2}k|<\displaystyle\frac{1}{n}\)・・・④
ここで、もし絶対値の中身が\(0\)でないとすると、\(n\)を大きくすれば右辺はいくらでも小さくなるので(ただし正の数)、不等式が成り立たない\(n\)が存在してしまいます((3)の結果に矛盾する)。具体例を挙げると、絶対値の中身が\(0.00002\)とすると、\(0.00002≧\displaystyle\frac{1}{n}\) つまり \(n≧\displaystyle\frac{1}{0.00002}\) を満たす\(n\)をとれば、④が成り立たなくなってしまいます。

(3)より
\(|n(a_k-\log_{2}k)|<1\)
つまり
\(|a_k-\log_{2}k|<\displaystyle\frac{1}{n}\)・・・④
が任意の自然数\(n\)で成り立つ。

ここで、\(a_k≠\log_{2}k\) と仮定すると
\(|a_k-\log_{2}k|≧\displaystyle\frac{1}{n}\) \(⇔\) \(n≧\displaystyle\frac{1}{|a_k-\log_{2}k|}\)・・・⑤
より、⑤を満たすような自然数\(n\)をとると、④が成り立たなくなってしまう。

よって\(a_k=\log_{2}k\) (このとき与えられた条件をすべて満たす)
\(k\)を\(n\)にして
\(a_n=\log_{2}n\)

 

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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