整数となる分数式

 

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整数となる分数式に関する問題を見ていきます。

 

 

(例題1)
\(x^3-xy-y+10=0\) を満たす整数\(x,y\)の値を求めよ。ただし、必要ならば
\(x^3+10=(x+1)(x^2-x+1)+9\) を用いてもよい。

 

 

(解答)

\(x\)については3次ですが、\(y\)についは1次なので、\(y=・・・\)の形に変形します。

与式より
\((x+1)y=x^3+10\)・・・①
\(x=-1\) のとき①は成り立たないので、\(x≠-1\)
よって①より
\(y=\displaystyle\frac{x^3+10}{x+1}\)・・・②

 

②式は分母より分子の次数が大きいので、帯分数の形にします。
本来はヒントなしで、\(x^3+10\)を\(x+1\)で割るのですが、整式の除法(数Ⅱ)の範囲なのでただし書きをつけました。

②は
\(y=\displaystyle\frac{(x+1)(x^2-x+1)+9}{x+1}\)
だから
\(y=x^2-x+1+\displaystyle\frac{9}{x+1}\)・・・③

よって、\(y\)が整数となるには、\(\displaystyle\frac{9}{x+1}\)が整数となればよいので、\(x+1\)は\(9\)の約数となる。
\(x+1=1,3,9,-1,-3,-9\) より
\(x=0,2,8,-2,-4,-10\)
③より それぞれの\(x\)について順に
\(y=10,6,58,-2,18,110\)

以上より
\((x,y)=(0,10),(2,6),(8,58)\)\(,(-2,-2),(-4,18),(-10,110)\)

 

 

 

(例題2)
\(\displaystyle\frac{8a+8}{a^2+4a+12}\) が整数となる整数\(a\)の値をすべて求めよ。

 

 

 

分母より分子のほうが次数が小さいので、帯分数の形にはできません。
さらに分母分子にはどちらも文字が含まれているので単純に約数を数えあげることができないパターンです。
この問題では、2つの解法(+参考解法)を紹介します。

 

(解法1) 分数式\(=k\)(整数)とおいて、不定方程式にもちこむ方法
\(\displaystyle\frac{8a+8}{a^2+4a+12}=k\) (\(k\)は整数) とおく。
\(k(a^2+4a+12)=8a+8\)
\(ka^2+2(2k-4)a+12k-8=0\)・・・①

(ア)\(k=0\) のとき
①は\(-8a-8=0\) であり、\(a=-1\)

(イ)\(k≠0\) のとき
\(a\)は整数(実数)なので、①の判別式
\(\displaystyle\frac{D}{4}\)
\(=(2k-4)^2-k(12k-8)\)
\(=-8k^2-8k+16≧0\)
\(k^2+k-2≦0\)
\((k+2)(k-1)≦0\) より
\(-2≦k≦1\) (ただし\(k≠0\))・・・②

②の範囲の\(k\)について①より\(a\)を求めると
\(k=-2\) のとき ①に代入して
\(-2a^2-16a-32=0\) より
\(a^2+8a+16=0\)
\((a+4)^2=0\)
よって \(a=-4\)

\(k=-1\) のとき 同様にして
\((a+10)(a+2)=0\) となり
\(a=-10,-2\)

\(k=1\) のときも同様に
\((a-2)^2=0\) となり
\(a=2\)

 

以上より、\(a=-10,-4,-2,-1,2\) であり、逆にこのとき\(\displaystyle\frac{8a+8}{a^2+4a+12}\) は整数となる。

 

答え \(a=-10,-4,-2,-1,2\)

 

 

 

(解法2) (分子の絶対値)≧(分母の絶対値) として不等式を解く方法

分数式が整数となるのは\(\displaystyle\frac{3}{1}\) や\(\displaystyle\frac{-15}{5}\) や \(\displaystyle\frac{-16}{-4}\)など、分子の絶対値が分母の絶対値より大きい場合です。
ただし、分子が\(0\)となるときは、分母の絶対値より分子の絶対値が小さくなるので、これだけ特別に考えることにします。

与えられた分数式の分子が\(0\)となるのは、\(a=-1\) のときで、このとき分母は\(0\)とならないため、\(a=-1\) は求める値の1つである。

\(a≠-1\)のとき
\(a^2+4a+12=(a+2)^2+8≧0\) であり
\(\displaystyle\frac{8a+8}{a^2+4a+12}\)・・・(A) が整数となるには

\(|8a+8|≧a^2+4a+12\)・・・① が必要である。

(ア)\(8a+8>0\) のとき (\(a>-1\)のとき)

①は \(8a+8≧a^2+4a+12\)
\(a^2-4a+4≦0\)
\((a-2)^2≦0\) より
\(a=2\) このとき(A)は\(1\)となり整数である。

(イ)\(8a+8<0\) のとき (\(a<-1\) のとき)

①は\(-(8a+8)≧a^2+4a+12\)
\(a^2+12a+20≦0\)
\((a+10)(a+2)≦0\) より
\(-10≦a≦-2\)・・・②

②の範囲内の\(a\)について分数式(A)が整数となるものを探します。
なお\(a=-2,-10\) については、分母と分子の絶対値が等しいので、(A)\(=1\) or \(-1\) で、分子が負なので\(-1\)です。

(A)\(=\displaystyle\frac{8(a+1)}{a^2+4a+12}\) より
②の範囲で(A)が整数となるものを調べると

\(a=-10\) のとき (A)\(=-1\)

\(a=-9\) のとき (A)\(=-\displaystyle\frac{64}{57}\) で不適

\(a=-8\) のとき (A)\(=-\displaystyle\frac{56}{44}\) で不適

\(a=-7\) のとき (A)\(=-\displaystyle\frac{48}{33}\) で不適

\(a=-6\) のとき (A)\(=-\displaystyle\frac{40}{24}\) で不適

\(a=-5\) のとき (A)\(=-\displaystyle\frac{32}{17}\) で不適

\(a=-4\) のとき (A)\(=-2\)

\(a=-3\) のとき (A)\(=-\displaystyle\frac{16}{9}\) で不適

\(a=-2\) のとき (A)\(=-1\)

 

以上より
\(a=-10,-4,-2,-1,2\)

 

 

(参考)
\(f(a)=\displaystyle\frac{8a+8}{a^2+4a+12}\) とおいて
\(a\)の関数として、\(f(a)\)を微分してグラフを考えると(数Ⅲ)、
\(-2≦f(a)≦1\) となるので、\(f(a)\)が整数となるとき
\(-2,1,0,1\) のいずれかとなることがわかります。あとはこれらの値となるときの\(a\)を調べて整数となるものを探せば答えとなります。

 

 

 

 

(例題3)
(1)\(n\)を自然数とするとき、\(n+1\) と \(2n+1\) は互いに素であることを示せ。
(2)\(\displaystyle\frac{505n+445}{2n^2+3n+1}\) が整数となる自然数\(n\)を求めよ。

 

(解答)

(1)

\(n+1\) と \(2n+1\) の最大公約数を\(g(>0)\)とすると
\(n+1=gk\)・・・①
\(2n+1=gl\)・・・② \((k,l\)は互いに素である自然数\)
とおける。

ここで2×①-②より
\(1=g(2k-l)\)
\(2k-l\)は整数なので、\(g=1\)

よって題意は示された。

 

 

(2)

例題2の解法1,2で範囲を絞ろうとしても範囲がかなり広くなってしまいます。
そこで、分母が因数分解できることに着目して、部分分数分解をしてみます。

\(\displaystyle\frac{505n+445}{2n^2+3n+1}\)\(=\displaystyle\frac{505n+445}{(2n+1)(n+1)}\)\(=\displaystyle\frac{a}{2n+1}+\displaystyle\frac{b}{n+1}\) とおくと

\(a=385\) , \(b=60\) であるから

\(\displaystyle\frac{505n+445}{2n^2+3n+1}\)\(=\displaystyle\frac{385}{2n+1}+\displaystyle\frac{60}{n+1}\) である。

 

ここで(1)より、\(n+1\) と \(2n+1\) は互いに素です。
分母が互いに素である分数同士の和は、それぞれの分数がどちらも整数でないと、和は整数とはなりません。(後述参照)

(1)より、\(n+1\) と \(2n+1\) は互いに素なので、
与式の分数式が整数となるには、\(\displaystyle\frac{385}{2n+1}\)と\(\displaystyle\frac{60}{n+1}\) のそれぞれが整数とならなければならない。

\(385=5×7×11\) より
\(2n+1=5,7,11,35,55,77,385\) だから
\(n=2,3,5,17,27,38,192\)

このうち、\(\displaystyle\frac{60}{n+1}\)が整数となるのは
\(n=2,3,5\)

したがって \(n=2,3,5\)

 

 

 

 

最後に、分母が互いに素である分数の和は、それぞれの分数がどちらも整数でない場合は整数とならないことを示しておきます。(一方のみが整数のときは明らかに整数とならないので両方とも整数でない分数であるときを考えます)

 

\(p,q\)を互いに素である\(0\)でない自然数、\(a,b\)を\(0\)でない整数とする。
\(\displaystyle\frac{a}{p}\)と\(\displaystyle\frac{b}{q}\)のどちらも整数でないとき、\(\displaystyle\frac{a}{p}+\displaystyle\frac{b}{q}\) は整数とはならない。

(証明)

まず、\(\displaystyle\frac{a}{p}\)と\(\displaystyle\frac{b}{q}\)を既約分数にする。
\(a,p\) の最大公約数を\(g_1\)、\(b,q\) の最大公約数を\(g_2\) とすると
\(a=g_1a’\), \(p=g_1p’\) (\(a’,p’\)は互いに素である整数, \(p’>0\))
\(b=g_2b’\), \(q=g_2q’\) (\(b’,q’\)は互いに素である整数, \(q’>0\))
と表せる。

よって、
\(\displaystyle\frac{a}{p}=\displaystyle\frac{a’}{p’}\)  \(\displaystyle\frac{b}{q}=\displaystyle\frac{b’}{q’}\)

\(\displaystyle\frac{a}{p}\)と\(\displaystyle\frac{b}{q}\)のどちらも整数でないので、\(p’≠1\) ,\(q’≠1\) であり、\(p,q\)は互いに素であるから、\(p’,q’\)も互いに素。

\(\displaystyle\frac{a}{p}+\displaystyle\frac{b}{q}=\displaystyle\frac{a’}{p’}+\displaystyle\frac{b’}{q’}\)\(=\displaystyle\frac{a’q’+b’p’}{p’q’}\)

分子の\(a’q’+b’p’\)のうち、\(b’p’\)は\(p’\)で割りきれるが、\(a’q’\)は、\(a’,p’\)
が互いに素、\(p’,q’\)が互いに素であるから、\(p’≠1\)より\(p’\)で割り切れない。
よって、\(a’q’+b’p’\)は\(p’\) で割り切れない。

したがって、\(\displaystyle\frac{a}{p}+\displaystyle\frac{b}{q}\) は整数ではない。

 

 

 

 

 

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。

 

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