積分方程式の例題です。
(1)積分に関係のない変数は分離する。
(2)定積分が定数(上端,下端が定数)ならば文字定数でおく。
(3)定積分が変数(上端,下端が変数)ならば微分する。
(4)上端下端の文字に適当な数を代入する。
このうち、問題を捉えるときに特に重要なのが、定積分が(2)定数になるのか、(3)変数(関数)になるのかです。
さらに、数Ⅲでは置換積分や部分積分なども利用することもあります。
(例題1)
関数\(f(x)\)が
\(f(x)=\sin x+\displaystyle\frac{1}{π}\displaystyle\int_{0}^{π}f(t)\sin(x-t)dt\)
を満たす。このとき、\(f(x)\) を求めよ。
(解答)
\(f(x)=\sin x+\displaystyle\frac{1}{π}\displaystyle\int_{0}^{π}f(t)\sin(x-t)dt\)
より
\(f(x)=\sin x+\displaystyle\frac{1}{π}\displaystyle\int_{0}^{π}f(t)(\sin x\cos t-\cos x \sin t)dt\)
\(f(x)=\sin x+\sin x\cdot\displaystyle\frac{1}{π}\displaystyle\int_{0}^{π}f(t)\cos tdt-\cos x\cdot\displaystyle\frac{1}{π}\displaystyle\int_{0}^{π}f(t)\sin tdt\)
よって、\(A,B\)を定数とすると
\(A=\displaystyle\int_{0}^{π}f(t)\cos tdt\)・・・①
\(B=\displaystyle\int_{0}^{π}f(t)\sin tdt\)・・・②
とおけて
\(f(x)=(1+\displaystyle\frac{A}{π})\sin x-\displaystyle\frac{B}{π}\cos x\)・・・③
となる。
もともとの積分方程式
\(f(x)=\sin x+\displaystyle\frac{1}{π}\displaystyle\int_{0}^{π}f(t)\sin(x-t)dt\)
は、\(f(x)\)自身が定積分の被積分関数に含まれるので、\(f(x)\)を被積分関数の部分に代入するという作業が必要になってきます。これが③を①②に代入するということです。
③を①に代入して
\(A=\displaystyle\int_{0}^{π}\{(1+\displaystyle\frac{A}{π})\sin t-\displaystyle\frac{B}{π}\cos t\}\cos tdt\)
\(=\displaystyle\int_{0}^{π}\{\displaystyle\frac{1}{2}(1+\displaystyle\frac{A}{π})\sin 2t-\displaystyle\frac{B}{π}\cdot\displaystyle\frac{1+\cos2t}{2}\}dt\)
\(=\left[-\displaystyle\frac{1}{4}(1+\displaystyle\frac{A}{π})\cos 2t-\displaystyle\frac{B}{π}\cdot(\displaystyle\frac{1}{2}t+\displaystyle\frac{\sin2t}{4})\right]_{0}^{π}\)
\(=0-\displaystyle\frac{B}{2}+0\)
ゆえに
\(A=-\displaystyle\frac{B}{2}\)・・・④
また③を②に代入して
\(B=\displaystyle\int_{0}^{π}\{(1+\displaystyle\frac{A}{π})\sin t-\displaystyle\frac{B}{π}\cos t\}\sin tdt\)
\(=\displaystyle\int_{0}^{π}\{(1+\displaystyle\frac{A}{π})\cdot\displaystyle\frac{1-\cos2t}{2}-\displaystyle\frac{B}{2π}\sin2t\}dt\)
\(=\left[(1+\displaystyle\frac{A}{π})(\displaystyle\frac{t}{2}-\displaystyle\frac{\sin2t}{4})+\displaystyle\frac{B}{4π}\cos2t\right]_{0}^{π}\)
\(=(1+\displaystyle\frac{A}{π})(\displaystyle\frac{π}{2}-0)+0\)
よって
\(B=\displaystyle\frac{π}{2}+\displaystyle\frac{A}{2}\)・・・⑤
④⑤より
\(A=-\displaystyle\frac{1}{5}π\)、\(B=\displaystyle\frac{2}{5}π\)
したがって\(f(x)\)はこれらを③に代入すると
\(f(x)=(1+\displaystyle\frac{A}{π})\sin x-\displaystyle\frac{B}{π}\cos x\)
\(=\displaystyle\frac{4}{5}\sin x-\displaystyle\frac{2}{5}\cos x\)
(例題2)
連続な関数\(f(x)\)が以下の式を満たすとき、次の問いに答えよ。
\(\displaystyle\int_{a}^{x}(x-t)f(t)dt=\cos ax-b\)
ただし、\(a,b\)は定数で \(0<a<2\) とする。
(1)定数\(a,b\)の値を求めよ。
(2)\(f(x)\)を求めよ。
また積分変数は\(t\)なので\(x\)はもちろん分離して、上端が変数\(x\)より微分もします。
(解答)
(1)
\(\displaystyle\int_{a}^{x}(x-t)f(t)dt=\cos ax-b\)・・・①
①に\(x=a\)を代入して
\(0=\cos a^2-b\)・・・②
また①より
\(x\displaystyle\int_{a}^{x}f(t)dt-\displaystyle\int_{a}^{x}tf(t)dt=\cos ax-b\)
両辺\(x\)で微分すると(1項目は積の微分)
\(\left\{\displaystyle\int_{a}^{x}f(t)dt-xf(x)\right\}-xf(x)=-a\sin ax\)
よって
\(\displaystyle\int_{a}^{x}f(t)dt=-a\sin ax\)・・・③
③に\(x=a\)を代入して
\(0=-a\sin(a^2)\)・・・④
ここで、\(0<a<2\) より \(0<a^2<4\) だから④を満たすのは
\(a^2=π\) (\(π≒3.14\))
よって、\(a=\sqrt{π}\)
②より
\(b\)\(=\cosπ\)\(=-1\)
(2)
(③をさらに微分するだけです)
\(\displaystyle\int_{\sqrt{π}}^{x}f(t)dt=-\sqrt{π}\sin \sqrt{π}x\)・・・③
の両辺を\(x\)で微分して
\(f(x)=-π\cos\sqrt{π}x\)
(参考)微分と積分の必要十分性
原始関数とその導関数の必要十分性(特に十分性)について、次のことが成り立ちます。
\(h'(x)\)、\(g'(x)\) の原始関数をそれぞれ \(h(x)\)、\(g(x)\) とすると
\(⇔\) \(h'(x)=g'(x)\) かつ \(h(p)=g(p)\) (\(p\)はある定数)
\(h(x)=g(x)\) \(→\) \(h'(x)=g'(x)\) (原始関数が等しければ、導関数は等しい)
は成り立ちますが、その逆
\(h'(x)=g'(x)\) \(→\) \(h(x)=g(x)\) (導関数が等しければ、原始関数は等しい)
は成り立つとは限りません。これは積分定数\(C\)の分だけズレが生じる可能性があるためです。
このズレを無くすために(十分性を保証させるために)、\(h(p)=g(p)\) (原始関数においてある値が一致する) という条件を加えることになります。積分方程式に当てはめると、\(h(p)=g(p)\) というのは適当な数値を1つ代入するということです。(例題2だと \(x=a\) の代入にあたる)
(例題2)では、\(x=a\) を2回代入していますが、これは(2)で\(f(x)\)を求めるまでに合計2回微分しているからです。
以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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