引き続き、対数の近似値や大小比較に関する問題を扱っていきます。
今回は主に大小比較についてです。
(例題1)
(1)\(\log_{2}3\), \(\log_{3}4\), \(\log_{4}2\) の大小関係を調べよ。
(2)\(\log_{\sqrt{2}}7\), \(\log_{\frac{1}{4}}6\), \(\sqrt[3]{50}\), \(2\cos98°\) の大小関係を調べよ。
(解答)
(1)
3つの数のうち、\(\log_{4}2\) だけが負であることにまず着目して、のこり2つの大小を決定します。
\(\log_{2}3>1\), \(\log_{3}4>1\), \(\log_{4}2<1\) より
1つ目と2つ目を比較すればよい。
(底を2にあわせると)
\(\log_{3}4=\displaystyle\frac{2}{\log_{2}3}\) より
\(\log_{2}3-\log_{3}4\)
\(=\log_{2}3-\displaystyle\frac{2}{\log_{2}3}\)
\(=\displaystyle\frac{(\log_{2}3)^2-2}{\log_{2}3}\)・・・①
\(\sqrt{2}≒1.4\) で、\(\sqrt{2}≒\log_{2}2^{1.4}\) より、2の1.4乗付近で計算しやすい値を探します。
ここで、\(1.5^2=2.25>2\) より
\(1.5>\sqrt{2}\) だから
\(\log_{2}3-\sqrt{2}\)
\(>\log_{2}3-1.5\)
\(=\log_{2}3-\log_{2}2^{1.5}\)
\(=\log_{2}3-\log_{2}\sqrt{8}\)
\(=\log_{2}\sqrt{9}-\log_{2}\sqrt{8}\)
\(>0\)
よって \(\log_{2}3>\sqrt{2}\) であり
①の分母分子ともに正なので
\(\log_{2}3>\log_{3}4\)
したがって
\(\log_{2}3>\log_{3}4>\log_{4}2\)
(2)
\(\log_{\sqrt{2}}7\) と \(\sqrt[3]{50}\) は正の数で
\(\log_{\frac{1}{4}}6\) と \(2\cos98°\) は負の数であることはすぐにわかるので、あとはそれぞれ大小をさらに絞り込みます。
対数については底が1より大きいか小さいかについて着目すると
(i)\(\log_{\sqrt{2}}7>0\) \(\sqrt[3]{50}>0\)
(ii)\(\log_{\frac{1}{4}}6<0\) \(2\cos98°<0\)
(i)
\(\log_{\sqrt{2}}4<\log_{\sqrt{2}}7<\log_{\sqrt{2}}8\) (4~6の数)
\(\sqrt[3]{27}<\sqrt[3]{50}<\sqrt[3]{64}\) (3~4の数)
です。式にする前にある程度頭のなかで計算すると方針が立てやすいと思います。たとえば、\(\sqrt[3]{50}\) は、 \(3^3=27\), \(4^3=64\) より \(3~4\) の数であるなど。
\(\log_{\sqrt{2}}4<\log_{\sqrt{2}}7<\log_{\sqrt{2}}8\) より
\(4<\log_{\sqrt{2}}7<6\)
\(\sqrt[3]{27}<\sqrt[3]{50}<\sqrt[3]{64}\) より
\(3<\sqrt[3]{50}<4\)
ゆえに
\(\sqrt[3]{50}<\log_{\sqrt{2}}7\)
(ii)
底が1より小さいことに注意して
\(\log_{\frac{1}{4}}8<\log_{\frac{1}{4}}6<\log_{\frac{1}{4}}4\)
よって
\(-\displaystyle\frac{3}{2}<\log_{\frac{1}{4}}6<-1\)
\(2\cos120°<2\cos98°<2\cos90°\) より
\(-1<2\cos98°<0\)
したがって
\(\log_{\frac{1}{4}}6<2\cos98°\)
以上より
\(\log_{\frac{1}{4}}6<2\cos98°\)\(<\sqrt[3]{50}<\log_{\sqrt{2}}7\)
(例題2)
\(1<a<b<a^2\) のとき
\(\log_{a}b\), \(\log_{b}a\), \(\log_{a}(\displaystyle\frac{a}{b})\), \(\log_{b}(\displaystyle\frac{b}{a})\), \(0\), \(\displaystyle\frac{1}{2}\), \(1\)
を小さい順に並べよ。
「\(1<a<b\) 」から
\(\log_{a}b\)\(>1\)
\(\log_{b}a\) は、\(0~1\) の数で、
\(\log_{a}(\displaystyle\frac{a}{b})=1-\log_{a}b\) より、これは負の数
\(\log_{b}(\displaystyle\frac{b}{a})=1-\log_{b}a\) より、これは\(0~1\) の数
したがってあとは、\(\log_{b}a\), \(\log_{b}(\displaystyle\frac{b}{a})\), \(\displaystyle\frac{1}{2}\) の大小を比べればよいことになります。使っていない条件、「\(b<a^2\)」を利用しましょう。
(解答)
\(1<a<b\) より
\(\log_{a}b>\log_{a}a\)
よって \(\log_{a}b>1\)・・・①
\(\log_{a}(\displaystyle\frac{a}{b})=1-\log_{a}b\)
①より
\(\log_{a}(\displaystyle\frac{a}{b})<0\)
次に
\((1<)a<b<a^2\) より 底を\(b\)とする対数をとって
\(\log_{b}a<1<2\log_{b}a\)
したがって \(\log_{b}a\) について整理すると
\(\displaystyle\frac{1}{2}<\log_{b}a<1\)・・・②
\(\log_{b}(\displaystyle\frac{b}{a})=1-\log_{b}a\)
②より
\(0<\log_{b}(\displaystyle\frac{b}{a})<\displaystyle\frac{1}{2}\)
以上より小さい順に並べると
\(\log_{a}(\displaystyle\frac{a}{b})\), \(0\), \(\log_{b}(\displaystyle\frac{b}{a})\), \(\displaystyle\frac{1}{2}\), \(\log_{b}a\), \(1\), \(\log_{a}b\)
(例題3)
\(\log_{10}2\) の近似値 \(0.3010\) を使わずに以下の問いに答えよ。
(1)\(α=\log_{1000}2\) とおくとき、\(pα>1\) となるような最小の整数\(p\) を求めよ。
(2) (1)で求めた\(p\)について、不等式 \(0<pα-1<\displaystyle\frac{1}{p}\) が成り立つことを示せ。
(3) 不等式 \(0.3<\log_{10}2<0.33\) が成り立つことを示せ。
(解答)
(1)
\(p\log_{1000}2>1\) より
\(\log_{1000}2^p>\log_{1000}1000\)
\(2^p>1000\)・・・①
よって①を満たす最小の整数\(p\)は、
\(p=10\)
(2)
\(0<pα-1\) のほうは (1)より成り立ちます。もう一方の不等式は、不等式の証明の基本にならって差をとって\(0\)より小さい(大きい)ことを示します。式をキレイにするために最初に\(p\)倍 (\(p=10>0\)だから不等号の向きは変わらない) してもよいです。
(1)で \(pα>1\) になるように \(p=10\) と定めたので
\(pα-1>0\) は成り立つ。
一方
\((pα-1)-\displaystyle\frac{1}{p}=\displaystyle\frac{p(pα-1)-1}{p}\)
\(p>0\) より、(分子)<0 を示せばよい。
\(p(pα-1)-1\)
\(=p^2α-p-1\)
\(=100\log_{1000}2-11\)
\(=\log_{1000}2^{100}-\log_{1000}1000^{11}\)
\(=\log_{1000}(\displaystyle\frac{2^{100}}{10^{33}})\)
底が\(1000\)なので真数が\(1\)より小さい、つまり \(\displaystyle\frac{2^{100}}{10^{33}}<1\) を示すことになりますがやや大変です。ひとまず式を簡単にしていきます。
ここで
\(\displaystyle\frac{2^{100}}{10^{33}}\)\(=\displaystyle\frac{2^{100}}{2^{33}\cdot5^{33}}=2\cdot\displaystyle\frac{(2^2)^{33}}{5^{33}}\)\(=2\cdot(\displaystyle\frac{4}{5})^{33}\)
\(2\cdot(\displaystyle\frac{4}{5})^{33}
=2\cdot(\displaystyle\frac{4}{5})^4\cdot(\displaystyle\frac{4}{5})^{29}=\displaystyle\frac{512}{625}(\displaystyle\frac{4}{5})^{29}\)\(<1\)
よって
\(\log_{1000}(\displaystyle\frac{2^{100}}{10^{33}})<0\)
であるから
\(p(pα-1)-1<0\)
したがって
\(pα-1<\displaystyle\frac{1}{p}\)
(3)
\(0<pα-1<\displaystyle\frac{1}{p}\) より
\(1<pα<1+\displaystyle\frac{1}{p}\)
\(p>0\)より
\(\displaystyle\frac{1}{p}<α<\displaystyle\frac{p+1}{p^2}\)
\(\displaystyle\frac{1}{10}<\log_{1000}2<\displaystyle\frac{11}{100}\)
\(\log_{1000}2=\displaystyle\frac{\log_{10}2}{\log_{10}1000}=\displaystyle\frac{1}{3}\log_{10}2\) より
\(\displaystyle\frac{1}{10}<\displaystyle\frac{1}{3}\log_{10}2<\displaystyle\frac{11}{100}\)
したがって
\(0.3<\log_{10}2<0.33\)
以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
next→常用対数の値 back→対数の近似値・大小比較①