因数分解と漸化式

因数分解を利用する漸化式の例題です。

 

(例題1)
数列\(\{a_n\}\) (\(n=1,2,3,\cdots\)) があるとき、初項から第\(n\)項までの和を\(S_n\) (\(n=1,2,3,\cdots\)) とおく。いま、\(a_n\)と\(S_n\)が、関係式

\(S_n=2a_n^2+\displaystyle\frac{1}{2}a_n-\displaystyle\frac{3}{2}\)

をみたし、かつ、すべての項\(a_n\)は同符号である。このとき

(1)\(a_{n+1}\)を\(a_n\)を用いて表せ。
(2)一般項\(a_n\)を\(n\)の式で表せ。

 

 

(解答)
(1)

\(S_{n+1}-S_{n}=a_{n+1}\) を利用して\(a_n\)のみの式にします。

\(S_n=2a_n^2+\displaystyle\frac{1}{2}a_n-\displaystyle\frac{3}{2}\)・・・①
より

\(S_{n+1}=2a_{n+1}^2+\displaystyle\frac{1}{2}a_{n+1}-\displaystyle\frac{3}{2}\)・・・②

②-①から
\(a_{n+1}=2(a_{n+1}^2-a_{n}^2)+\displaystyle\frac{1}{2}(a_{n+1}-a_n)\)

やや複雑な漸化式ですが、整理すると因数分解できる形になっています。

\(2(a_{n+1}^2-a_{n}^2)+\displaystyle\frac{1}{2}(-a_{n+1}-a_n)=0\)

\(2(a_{n+1}+a_{n})(a_{n+1}-a_{n})-\displaystyle\frac{1}{2}(a_{n+1}+a_n)=0\)

\((a_{n+1}+a_{n})(2a_{n+1}-2a_{n}-\displaystyle\frac{1}{2})=0\)

ここですべての項\(a_n\)は同符号であるから
\(a_{n+1}+a_n≠0\)

よって
\(2a_{n+1}-2a_{n}-\displaystyle\frac{1}{2}=0\)

したがって
\(a_{n+1}=a_{n}+\displaystyle\frac{1}{4}\)・・・③

 

(2)

(1)で漸化式を求めたので、初項\(a_1\)を求めます。\(S_1=a_1\) から\(a_1\)を求めますが、2次方程式になるので\(a_1\)の値は2つ出てくるので吟味していきます。

\(S_n=2a_n^2+\displaystyle\frac{1}{2}a_n-\displaystyle\frac{3}{2}\)・・・①
に\(n=1\)を代入すると

\(a_1=2a_1^2+\displaystyle\frac{1}{2}a_1-\displaystyle\frac{3}{2}\)

\(4a_1^2-a_1-3=0\)
\((4a_1+3)(a_1-1)=0\)
よって
\(a_1=-\displaystyle\frac{3}{4},1\)

(ア)\(a_1=-\displaystyle\frac{3}{4}\) のとき
\(a_{n+1}=a_{n}+\displaystyle\frac{1}{4}\)・・・③ (等差型) より

\(a_n=-\displaystyle\frac{3}{4}+(n-1)\cdot\displaystyle\frac{1}{4}\)
ゆえに
\(a_n=\displaystyle\frac{1}{4}n-1\)
だが、途中で符号が変わるので不適。

(イ)\(a_1=1\) のとき
③より
\(a_n=1+(n-1)\cdot\displaystyle\frac{1}{4}\)

よって
\(a_n=\displaystyle\frac{1}{4}n+\displaystyle\frac{3}{4}\)
(すべての項は正の数であるので適する)

 

 

 

(例題2)
次の性質をもつ数列\(\{a_n\}\)を考える。
\(a_1=3\),  \(a_{n+1}>a_n\),
\(a_{n}^2-2a_na_{n+1}+a_{n+1}^2=3(a_{n}+a_{n+1})\) (\(n=1,2,3,\cdots\))

(1)\(n=1,2,3,\cdots\)に対し、\(a_{n}+a_{n+2}\)を\(a_{n+1}\)を用いて表せ。
(2)\(b_n=a_{n+1}-a_n\)  (\(n=1,2,3,\cdots\)) により定まる数列\(\{b_n\}\)の一般項を求めよ。
(3)数列\(\{a_n\}\)の一般項を求めよ。

 

 

(解答)
(1)

\(a_{n+2}\)が登場する等式を求めたいので、漸化式で \(n→n+1\) とした式を考えて、もとの漸化式と作った漸化式の和や差をとってみます。漸化式の左辺が \((a_{n}-a_{n+1})^2\) と因数分解できることを考慮すると、差のほうがよさそうです。

\(a_{n}^2-2a_na_{n+1}+a_{n+1}^2=3(a_{n}+a_{n+1})\)・・・①
より

\(a_{n+1}^2-2a_{n+1}a_{n+2}+a_{n+2}^2=3(a_{n+1}+a_{n+2})\)・・・②

②-①より
\(-2a_{n+1}(a_{n+2}-a_{n})+a_{n+2}^2-a_{n}^2=3(a_{n+2}-a_{n})\)

\(a_{n+2}^2-a_{n}^2-2a_{n+1}(a_{n+2}-a_{n})-3(a_{n+2}-a_{n})=0\)

\((a_{n+2}-a_n)(a_{n+2}+a_n-2a_{n+1}-3)=0\)

ここで
\(a_{n+1}>a_n\) より \(a_{n+2}>a_{n+1}\) だから
\(a_{n+2}>a_n\)

したがって \(a_{n+2}-a_n≠0\) だから
\(a_{n+2}+a_n-2a_{n+1}-3=0\)

\(a_{n+2}+a_n=2a_{n+1}+3\)

(2)

3項間漸化式(定数項あり)です。誘導に沿って解いていきます。

(1)より
\(a_{n+2}-2a_{n+1}+a_n=3\)・・・③
だから
\(a_{n+3}-2a_{n+2}+a_{n+1}=3\)・・・④

④-③と \(b_n=a_{n+1}-a_n\) より
\(b_{n+2}-2b_{n+1}+b_n=0\)
特性方程式 \(x^2-2x+1=0\) の解は \(x=1\) だから
\(b_{n+2}-b_{n+1}=b_{n+1}-b_n\)
ゆえに
\(b_{n+1}-b_n=\cdots=b_2-b_1\)

\(b_1,b_2\)の値を求めるのに必要な\(a_2,a_3\) を求めます。

\(a_{n}^2-2a_na_{n+1}+a_{n+1}^2=3(a_{n}+a_{n+1})\)・・・①
で\(n=1\)とすると、\(a_1=3\) より

\(9-6a_2+a_2^2=3(3+a_2)\)
\(a_2(a_2-9)=0\)
\(a_2>a_1\) より
\(a_2=9\)

③で\(n=1\)とすると
\(a_3-2a_2+a_1=3\)
よって \(a_3=18\)

ゆえに
\(b_1=a_2-a_1=6\)
\(b_2=a_3-a_2=9\)

したがって
\(b_{n+1}-b_n=3\)
となるから
\(b_n=b_1+(n-1)\cdot3\)
\(=3n+3\)

 

\(a_{n+2}-2a_{n+1}+a_n=3\)・・・③
で\(3\)をとりあえず無視してあとで加えるとすると、特性方程式の解 \(x=1\) (重解) から
\(a_{n+2}-a_{n+1}=a_{n+1}-a_{n}+3\)
したがって
\(b_{n+1}=b_n+3\)
と変形できると楽です。

 

(3)

\(b_n\)は\(a_n\)の階差数列です。

\(a_{n+1}-a_n=3n+3\) より \(n≧2\) のとき

\(a_n=a_1+\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}(3k+3)\)

\(=3+3\cdot\displaystyle\frac{1}{2}(n-1)n+3(n-1)\)

\(=\displaystyle\frac{3}{2}n^2+\displaystyle\frac{3}{2}n\)
(\(n=1\) でも成立する)

 

 

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見ていただきありがとうございました。
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